ホリショウのあれこれ文筆庫

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第17話 元大坂町奉行与力・大塩平八郎の乱

序文・日本史の教科書に出てきましたが、気になる人物だったので書籍を読んだついでに筆を執りました。今の政治家・官僚にはいないですなぁ~

                               堀口尚次

 

 江戸時代後期の儒学陽明学者(儒学の一派)で元大坂町奉行・与力の大塩平八郎は、清廉潔白の武士であったが、隠居して私塾「洗心洞」の塾頭となった後、幕府(大坂城代・大坂奉行)に対し民衆に檄文をとばし謀反を起こした。

 汚職原因である大坂町奉行と商人らの癒着や、賄賂を受け取り私利私欲に溺れる奉行や与力たちの不正を暴いていった平八郎であったが、腐敗の根は幕府中枢にも根付いており、大老と老中の駆け引きや大坂城代と各町奉行らの出世競争にも原因が及んでいたのであった。平八郎が幕閣に送り付けた建議書の中には、大坂町奉行与力らを仲介者とした「武家無尽」に関する告発が書かれていた。武家及びその家臣が「無尽」に関与する事は禁じられていたが、財政難で苦しむ諸藩は、自領内や大都市で「無尽」を行って莫大な利益を得ていた。

 平八郎は大坂で行われていた不法無尽を調査した際にこの事実を告発したが、無尽を行っていた大名達の中には幕閣の要人(老中・水野忠邦ら)も多くおり、彼らはその証拠を隠遁して捜査を中断させた。

 こんな中もはや武装蜂起によって奉行らを討ち、豪商を焼き討ちして灸をすえる以外に根本的解決は望めないと考え、門人・民衆と共に蜂起した。しかし同心の門人数人の密告によって事前に大坂奉行所の知るところとなったこともあって、蜂起当日に鎮圧された。敗退して潜伏場所が幕府方役人に囲まれる中、平八郎は養子息子(現・与力)と共に、短刀と火薬を用いて自決した。

 平八郎の代表作の「洗心洞箚記」に以下の文がある。

『自分自身の本性を欺いて勝手に自己満足していても、いずれ人様に見抜かれてしまう。正義と私利、誠と嘘偽りの境目を誤魔化して過ごしてはならない。口先だけで善を説く事無く、善を実践しなければならないのだ。』吉田松陰はこの著作を評価し、西郷隆盛も禁書となったこの著作を所蔵していた。           

 ちなみに檄文の一部は「天下の民が生活に困窮するようでは、その国は滅びる。政治をするに足る器でない小人どもが国を治めれば、国に天変地異や災害が起こることは昔の聖人が、深く天下後世の君子や人臣に教戒したところである。民衆が苦しんでいるにも関わらず、政治家や小役人どもは万物一体の仁を忘れ、私利私欲の為に得手勝手の政治をし、そのうえ勝手我儘の法を作って国内の遊民ばかりを大切にし、自分達だけ可不足なく暮している。」とある。

 彼の思想と行動は、吉田松陰高杉晋作西郷隆盛・河合継之助・佐久間象山へと受け継がれ、黒船航来という外圧が起こった際に、一気に全国運動となって幕末動乱から明治維新へと繋がることとなった。

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