ホリショウのあれこれ文筆庫

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第28話 戦争被害者の救済と問題点

序文・東京大空襲で後遺症を患ったかたのドキュメンタリー番組を見た。

戦争被害者の実態について考えてみた。

                               堀口尚次

 

 先日の報道で、国(菅内閣)は原爆被害者に対する補償認定裁判での高裁判決後、上告断念を表明した。原爆症の認定に対しては、多くの訴訟が起こされており、過去には最高裁判所が棄却したケースもある。原爆(放射線)による後遺症の認定は、非常に困難な医療判断になるのだろう。

 先の大戦で負傷した軍人や軍属(軍隊構成員でない文民)またその遺族に支給されているのが「軍人恩給」である。

 しかし戦争で負傷したのは、軍人・軍属ばかりではなく、民間人も多くが犠牲となっている。原爆はもとより、空襲や沖縄などの地上戦で犠牲となった民間人は数えきれない。そして、死はまぬがれたが負傷したり後遺症に苦しむ人は今日現在にもいる。生き延びたこれらの人々には何の補償もなされていない。

 被害者らは、空襲被害者の救済補償を求めて国に対して訴訟を起こしているが、ことごとく敗訴している。司法・裁判所としては、救済補償する立法が必要という立場だ。国会(立法府)では、「空襲被害者救済法」などの成立に向けた動きもあるが実現していない。

 本来その責任が、国際法に違反して、民間人を大量虐殺したアメリカにあることは明白だが、日本は「サンフランシスコ講和条約」によって戦争被害に対する連合国への請求権を廃棄させられている。そうした日本の事情を考えれば、戦時中の民間人への被害は、国民全体で享受しなければならないという意見もある。

 先に記した、沖縄や周辺諸島・当時日本が占領していた数々の南海諸島での戦闘で負傷した民間人、満州朝鮮半島にいて引き揚げ時に戦闘により負傷した民間人、樺太や千島列島(現北方領土含む)にいて戦闘に巻き込まれた民間人など様々な民間人の負傷者が存在する。

 また、当時日本にいた在日外国人で負傷した民間人、徴用工や慰安婦などが、戦争被害者として訴訟を起こしていることも事実だ。

 戦争の名のもとに、大量の人間を殺傷してきた政治判断の結果だ。軍隊の独裁政権でなければ、ほとんどの国が文民の国会議員が政治判断として選択した武力行為が戦争なのだ。

 主権国家が防衛の為に軍隊(武力組織)を常備するのは当然であろう。警察権力では対処できない、他国との武力衝突に備えるべきだ。当然、そうならないように外交による問題解決が最優先されることは言うまでもない。

 子供の頃、寺の参道で「傷痍軍人」を見た記憶があるが、もう見たくない。

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