ホリショウのあれこれ文筆庫

歴史その他、気になった案件を綴ってみました。

第41話 公共の利益と行政代執行

序文・法治国家だから法律に基づいて行政代執行が行われる。権利や義務や色んな事情が交錯する。

                               堀口尚次

 

 よくテレビのワイドショーなんかで、いわゆるゴミ屋敷の問題を採り上げているのを観る。色んなところ(ゴミ集積所からも)のゴミを持ち去ってしまい、自分の自宅及び敷地内にゴミを山積みにし、一部は公道にはみ出していたり、夏場などは悪臭を発生させ、害虫や害獣の温床にもなり、火災の危険も孕(はら)んでいるので、近隣住民の迷惑は元より、行政も困惑しているのが現状のようだ。         

 行政指導の末、改善が見られない場合は「行政代執行」とい手段が発動される。ゴミの撤去を第三者に委託し、その費用を義務者(行政上の義務を履行しなかった者)から徴収する。もし納付しない場合は、国税の滞納処分と同じやり方で、強制徴収することができるように規定されている。当然ながらゴミ撤去作業を行った業者には、一旦は税金から支払われることになる。

 「行政代執行法」の要件では、不履行を放置することが著しく公益に反すると認められることを要するとある。裁判所が認めた場合のみ、行政が代わりに執行できる。

 1971年に新東京国際空港(現・成田空港)建設予定地で実施された、未買収地への行政代執行は大きな社会問題となった。機動隊や新東京国際空港公団が雇った作業員らによって団結小屋等の排除が行われたが、空港建設反対派の地元住民や支援に来た新左翼セクトが激しく抵抗し、双方に多くの負傷者が出た。

 ゴミ屋敷なら分り易いが、国際空港の建設となると、著しく公共の利益に反するかが問題となろう。空港なんか全然使用しない人もいるし、空港の恩恵を直接受けることが、公益なのか。貿易などによる間接的な恩恵は当然あるので利益がないとは決して言えない。しかし空港建設反対(土地の売却拒否)が著しく公共の利益に反しているのか。もし自分が地権者だったら、拒否する権利は当然あるが、行政代執行が行われるまで戦えただろうか。

 詳しい経緯(いきさつ)は知らないので、無責任な事は言えないが、いわゆる「立ち退き」の問題で行政が関わっている場合は、複雑な利権や法律の矛盾点なんかが絡み合っている様に思う。公共の利益を考えることは、道徳でありマナーにも直結する。但し、道徳やマナーは法律で取り締まれないから、それこそ個々人の道徳心に委(ゆだ)ねられている。社会人として、著しく公共の利益に反しない行動が望まれる。そんなに難しいことではない、普通に生きていればいいのだ。

f:id:hhrrggtt38518:20210912200353j:plain