ホリショウのあれこれ文筆庫

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第47話 体罰と教育荒廃

序文・教育というものは難しい、答えがすぐ出ない。

                               堀口尚次

 

 愛知県の知多半島美浜町にある戸塚ヨットスクールで、体罰が常態化し社会問題になった過去がある。生徒が死亡する事故や行方不明や失踪が相次ぎ、刑事事件となり、関係者が実刑判決を受け、6年の懲役刑で服役する事になる。

 校長の戸塚宏氏は、「暴力・暴行」と「体罰」は違うと断言する。「暴力・暴行」は自分の利益の為にやり、「体罰」は相手の利益の為にやると云う。遅刻しそうになった生徒が校門で挟まれた事故について「胃潰瘍になったのは、胃が悪いんじゃない。校門で事故が起きたのは、規則が悪いんじゃない。運用が悪かったんだ。体罰即悪ではなく、体罰の運用を間違えるといかんのだ。」と云う。

 戸塚氏は、どうして教育荒廃が起きるのかを、理論的に考え解決策に辿り着いたという。体罰についても、病理学(びょうりがく)【病気の原因・発生機序(きじょ)=仕組 の解明や診断を確定するのを目的とする学問】ではなく、生理学【生命現象を機能の側面から研究する学問】で対処して行くと云う。 

 戸塚氏は「人は、恐怖とか不快感というものを嫌うが、この『快を求め、不快を避ける』と云う人間の行動原理を忘れてはならない」と云う。スクールでは、海(ヨットの操縦)を通して、自然の厳しさ(水の恐怖)を体験しながら、精神面を鍛えるものだと思うが、テレビの討論番組で「恐怖でちゃんとしたものが、恐怖の箍(たが)が外れた時に通用するのか疑問だ」と投げ掛けられている。

 時代背景には、家庭内暴力・非行少年・校内暴力・登校拒否児などが問題となり、学校や家庭では対処出来ないことから、戸塚ヨットスクールの需要が高まった事がある。そして、通常の学校や家庭では、なんともならなかった子が、ヨットスクールでは、僅(わず)かな期間で矯正していると云う。

 世の中と云うのは、経済でも何でも基本的に、「需要と供給」で成り立っていると思う。いくら批判を浴びても需要がなければ、スクールは成立しない。義務教育の学校の生徒とヨットスクールの生徒と先生の関係は、契約関係がまったく違うので一概(いちがい)に比較できない。

 スクールにやり過ぎの面があったのかも知れないし、スクールに子供を預けに来る親の気持ちは、その親にしか分らないだろう。教育荒廃が起きる原因は社会そのものにあり、社会問題として取り組むほかない。私は体罰を受けた経験はないが、精神面を鍛える事は一生かけて取り組む重要な事だと心得ている。

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