ホリショウのあれこれ文筆庫

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第57話 国家社会主義と日蓮主義

序文・社会主義者日蓮との関係に昔から興味があり、調べてみました。

                               堀口尚次

 

 東京裁判で、唯一民間人としてA級戦犯の容疑で起訴された「大川周明」や二・二六事件で、唯一民間人として処刑された「北一輝」などがこれらの思想と関わっている。

 社会主義とは、自由主義経済や資本主義の弊害に反対し、「より平等で公正な社会」を目指す思想・運動・体制を指す。因(ちな)みに、共産主義は「私有財産の否定」に重きを置いてる。

 昭和初期に、経済が疲弊し、汚職・癒着(ゆちゃく)が蔓延(はびこ)るなど政治が混沌とし、都市部と地方の農村部との格差が社会問題となり、現状の政治体制に不満を持つ思想家が台頭してきた。

 また、「日蓮主義」など宗教の力を民衆の後ろ盾にした思想家も現れ、「国家社会主義」と結び付いていった。「日蓮主義」は、宗教家・田中智学が提唱した、日蓮仏教の思想を単に信仰上の問題のみに限定する事なく、政治・経済・文化・芸術などの幅広い社会的な領域へ押し広げようとする外発的な運動」である。関東軍作戦参謀として満州事変を引き起こした首謀者の石原莞(かん)爾(じ)も独自の「日蓮主義」を育(はぐく)んでいる。「日蓮主義」が、戦後の創価学会などに影響を与えた事は否(いな)めず、元会長・戸田城聖などが推し進めた「折伏(しゃくぶく)運動=勧誘活動」にも顕(あらわ)れている。

 「国家社会主義」を提唱した大川周明は、近代日本の西洋化に対決し、精神面では日本主義(日本古来の伝統的な精神を重視)、内政面では社会主義もしくは統制経済(経済の資源分配を市場の価格調整メカニズムに任せるのではなく、国家の物財バランスに基づいた計画によって配分される体制)、外交面ではアジア主義(欧米列強のアジア浸出に対抗する)を唱道(しょうどう)した。

 北一輝は「明治維新の本義は民主主義にある」と主張し、大日本帝国憲法における天皇制を激しく批判した。「天皇の国民」ではなく「国民の天皇」であるとした。国家体制は、基本的人権が尊重され、言論の自由が保障され、華族貴族院に見られる階級制度は本来存在せず、また男女平等社会、男女共同参画社会など、これらが明治維新の本質でなかったのかとして、再度この達成にむけ

「維新革命」「国家改造」が必要であると主張した。

政治と思想・宗教が結びついていったことは、歴史の必然であったのだろうか。

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