ホリショウのあれこれ文筆庫

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第145話 召集令状は四色あった

序文・かぐや姫南こうせつが「あの人の手紙」で歌ってました。

                               堀口尚次

 

 召集令状(しょうしゅうれいじょう)とは、軍隊が在郷の者を兵士として召集するために個人宛に発布する令状である。帝国陸海軍の召集のうち召集令状等はその色から赤紙などと呼ばれた陸軍省による召集の大半において赤色が使われた。当初は真っ赤だったが、戦時の物資不足による染料の節約で次第に地色が薄くなり、実際に太平等戦争で多くの人が目にしたのはピンク(淡紅色、桃色、鴇色)である。なお、海軍省による召集でも似た系統の色が使われたため、陸海両軍の令状を混同して赤紙と表現することも多い。

 赤紙陸軍省による充員召集、臨時召集、帰休兵召集、国民兵召集、補欠召集。白紙=教育召集、演習召集、簡閲点呼。青紙=防衛召集。紅紙海軍省による充員召集。

 青紙の「防衛召集」とは、空襲などの際に国土防衛のため、予備役・補充兵役・国民兵役(在郷軍人と呼ぶ)を短期間召集すること。赤紙の充員召集・臨時召集・国民兵召集令状のうち、国民兵召集の区分は昭和16年の陸軍召集規則の改正により廃止された。以降は充員召集と臨時召集に集約されており、現存する赤紙の多くは臨時召集のものである。

 召集令状の表面から見て左側は「応召員旅客運賃割引証」ないしは「後払証」として切り離せるようになっていた。これは、召集令状を提示することによって目的地までの交通費が割引になる制度が当時の鉄道省に存在したためである。

後払証となっていた場合は、本人負担はなく、乗車指定駅で切り離して目的地までの切符が交付された。

 従軍記などに見る「一銭五厘」の表現は、当時のハガキの郵便料金が一銭五厘であったことから、兵隊は一銭五厘赤紙を送れば補充がきく、兵隊の命には一銭五厘の価値しかないという比喩である。ただし、実際には上述のとおり召集令状は役場の職員が直接持って来るのが原則だったため、郵送されることはなかった。召集令状赤紙・白紙・青紙)は陸軍省が作成した動員計画に基づき連隊区司令部で対象者を指定して発行される。発行された令状は最寄の警察署の金庫に密封保管され、動員令が発令されると警察官が市区役所・町村役場にこれを持参し、役所役場の兵事係吏員が応召者本人に直接手渡し(不在の場合はその家族に)交付した。各市町村の兵事係が編纂していた在郷軍人名簿には、市町村内に在住する兵役対象者の個人情報(健康状態や最終学歴、所有する技能や免許など)が記載され、これが管区の連隊に提出され、連隊の動員課がこの名簿を元に戦時編成に必要な技能を持った人員を選び出していた。

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