ホリショウのあれこれ文筆庫

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第158話 イソップ寓話

序文・正直であることが最善の策

                               堀口尚次

 

 『イソップ寓(ぐう)話』は、アイソーポス(イソップ)が作ったとされる寓話を集めたとされる寓話集。特に動物、生活雑貨(例えば、瀬戸物と金物など)、自然現象(太陽と風)、様々な人々(旅人など)を主人公にしたものが有名で、イソップ物語イソップ童話等と呼ばれることもある。

 寓話とは、比喩によって人間の生活に馴染みの深いできごとを見せ、それによって諭すことを意図した物語。 名指しされることのない、つまりは名無しの登場者は、動物、静物、自然現象など様々だが、必ず擬人化されている。 主人公が、もしくは主人公と敵対者が、ある結果をひき起こしたり、ある出来事に遭遇する始末を表現したりする本筋は、なぞなぞと同様な文学的構造を持ち、面白く、不可解な印象を与えることによって読者の興味をひき、解釈の方向を道徳的な訓話に向ける特性を持つ。民話によく見られるように、物語の語り末には、寓意的〈ある意味を直接には表さず別の物事に託して表すこと〉な解釈を付け加えることが習慣的に行われてきた。

 「アリとキリギリス」「ウサギとカメ」「王様の耳はロバの耳」「北風と太陽」「金の斧と銀の斧」など、子供の頃に親しんだものばかりだ。私はこの中で「金の斧」の寓話が好きだ。正直であることが最善の策であるという教訓の物語である。以下の内容を記してみた。

 『正直なきこりが斧を川に落としてしまい嘆いていると、ヘルメースの神が現れて川に潜り、金の斧を拾ってきて、きこりが落としたのはこの金の斧かと尋ねた。きこりが違うと答えると、ヘルメースは次に銀の斧を拾ってきたが、きこりはそれも違うと答えた。最後に鉄の斧を拾ってくると、きこりはそれが自分の斧だと答えた。ヘルメースはきこりの正直さに感心して、三本すべてをきこりに与えた。それを知った欲張りな別のきこりは斧をわざと川に落とした。ヘルメースが金の斧を拾って同じように尋ねると、そのきこりはそれが自分の斧だと答えた。しかしヘルメースは嘘をついたきこりには斧を渡さなかった。欲張りなきこりは金の斧を手に入れるどころか自分の斧を失うことになった。』

 単純に「嘘をついてはいけない」という教育的な教訓ではなく、正直であることがもたらす果報〈よい運を授かって幸福なこと〉を説いているように思えた。逆に「正直者が馬鹿を見る」は、ずる賢い者はうまく立ち回って得をするが、正直な者は秩序や規則を守るために、かえって損をすることが多いということのようだ。肝心なのは、損得に囚われない生き方なのだろうと思う。

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