ホリショウのあれこれ文筆庫

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第172話 楽器店の思い出

序文・思い出は美しすぎて~♪

                               堀口尚次

 

 私は、高校を卒業して楽器技術の専門学校へ入学し、ピアノ調律を学び、ピアノ調律師として愛知県の老舗ヤマハの特約店である楽器店に就職しました。その楽器店は、残念ながら今はもうありません。私が在籍したのも3年という短い間でしたが、結構楽しい思い出があるので忘れない内に記してみたいと思います。

 その楽器店は、本店が名古屋大須にあり、名古屋市昭和区御器所瀬戸市に支店があり、私は瀬戸店の配属になりました。

 店長が優しくて行動的で頼もしい人だったので、毎日が楽しかったです。半年ぐらいして、ヤマハに研修に行っていた社長の長男息子が戻ってくる事になり、瀬戸店に配属されました。長男息子は気合が入っており、自己紹介の後にいきなりヤマハでの研修仕込みなのか「今日もガンバロー!」とシュプレヒコールを挙げようとしたところ、店長が割って入り「そういうの嫌いだから」と打ち切ってしまったので、長男息子は肩透かしをくらったかのように、ガクンとしていました。私は、笑いをこらえるのが精一杯でした。

 親会社ではないが、ヤマハから指導的な立場で色んな社員さんが送り込まれてきました。その中にすごくフランクな社員さんがいて、私は大変仲をよくしてもらい、ある時には、独身でアパートで独り暮らしだった私に対し、ビデオデッキを持っていない私に、いかがわしいビデオテープを機械ごと貸してくれました。さっそく店長や同期入社の社員を呼んで、鑑賞会を開きました。

 瀬戸店が本店(社長在勤)から離れてる事もあるのか、店長は本当にフランクな人で、ある時は、なんと出勤日に、アユ釣りに連れて行ってもらいました。そんな店長でも、音楽教室の先生からは絶大な信頼を得ており、若い女性のピアノやエレクトーンの先生を数人誘い、軽井沢まで遊びに行った事もありました。さすがにこの時は休日を利用しました。

 楽器店では、若い女性(ピアノやエレクトーンの先生)と接する機会も多く、今考えるといい環境だったんだなあと、つくづく思います。グランド・ピアノを購入する音大生を、浜松のピアノ工場まで連れて行った事もあります。グランド・ピアノは一点物なので、実際に試奏して購入ピアノを決めるのでした。

 おもしろい思い出としてもうひとつ、給料があまりにも少なかったので、店長と一緒に、社長のところへ直談判に行った事もありました。そんなこんなで、私は、瀬戸店から名古屋の御器所店へ転勤になり、その1年後に退職しました。

 今は、瀬戸店でお世話になった店長は、独立して楽器店を経営しています。

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※画像と本分は関係ありません