序文・何事もバランスが重要かと
堀口尚次
左翼・右翼とは、政治的スペクトルの一つで、政治的な立場を位置づける一般的な方法である。伝統的な意味では進歩的(革新、革命)勢力を左翼(左派)、保守・復古主義勢力を右翼(右派)と呼ぶが、具体的な思想や範囲は時代や立場や視点により変化する。
一般的なイメージからすると、左翼といえば、共産主義的な考えの人で、右翼といえば、極端な国粋主義者であろうか。
この言葉はフランス革命期の「(憲法制定)国民議会」における会議において、「国王の法律拒否権」「一院制・二院制」の是非を巡り、議長席から見て議場右側に「国王拒否権あり・二院制(貴族院あり)」を主張する保守・穏健派が、左側に「国王拒否権なし・一院制(貴族院なし)」を主張する共和・革新派が陣取ったことに端を発し、続く「立法議会」においても、右側に立憲君主派であるフイヤン派が陣取ったのに対して、左側に共和派や世俗主義などの急進派(ジャコバン派)が陣取ったことに由来するといわれている。
伝統的には、左翼には進歩主義、社会自由主義、社会民主主義、社会主義、共産主義、アナキズムなどが含まれ 、右翼には保守主義、反動主義、王党派、国家主義、ファシズムなどが含まれるが、西側諸国の勝利に終わった20世紀後半の冷戦終結を受けて、戦間期に存在した立憲君主制及び多党制民主主義体制に復帰する国が増えたソビエト連邦崩壊後の現在社会において、左翼(革新派)と右翼(保守派)の定義は曖昧となり、さらにはかつて鉄のカーテンによって封鎖されていたソビエト共産党体制の内実が明らかになるにつれ、社会主義及び共産主義運動の思想的再定義に直面した思想史研究者を中心として、冷戦時代には極右体制の代名詞として規定される事が多かったファシズム(全体主義)を、ムッソリーニなどに代表されるその思想的源流から客観的に考察するという側面から広義の左翼 (極左)の一種であると再規定される事も多くなっている 。
「左」や「右」の用語は、単純な説明だけではなく、特定の視点でも使われる。現代の政治的な用法では、「左」は典型的には労働者への支援を主張し、「右」による上流階級の利益への支援を批判する。他方、「右」は典型的には個人主義〈経済的な自由主義〉への支持を主張し、「左」による集産主義〈生産手段などの集約化・計画化・統制化などを進める思想〉への支援を批判する。
これらに対して、新右翼や新左翼という立場もある。どこまで右に寄るか、あるいはどこまで左に寄るかで立場・思想に違いがあるようだ。