ホリショウのあれこれ文筆庫

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第192話 敵基地攻撃能力と専守防衛の矛盾点

序文・憲法は解釈によって違ってくる

                               堀口尚次

 

 敵基地攻撃能力とは、弾道ミサイルの発射基地など敵国の基地や拠点などを攻撃する装備能力のこと。

 敵基地攻撃能力を保有するべきと主張する論者が根拠とするのが、1956年に出された鳩山一郎首相の次の答弁である。

『わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。

 しかし、この問題は日本が戦後長く続けてきた「専守防衛」の理念とも絡み、政府内も一枚岩ではない。「専守防衛」とは、日本国憲法第9条2項による戦力不保持の理念と、現に自衛隊が存在する現実とのせめぎあいの間で生まれた概念で、日米安全保障条約のもとで、日本側は守りの「盾」に徹し、在日米軍が攻撃の「矛」を担うとするものである。これに基づいて日本は長い間、弾道ミサイルのような攻撃性の武器は保持しないとしてきた。

 たとえば、1970年に中国が核実験に成功し、北朝鮮弾道ミサイルを発射して緊張状態にあった時に、当時の中曽根康弘防衛庁長官はこう答弁した。

『明らかに日本の自衛行為や自衛力には限界があると思います。文民優位を徹底するということ、非攻撃性の装備でなければならない、徴兵を行なわない、海外出兵を行なわない、これらは日本国憲法の命ずるところであると解します。(中略)私は日本国憲法の命ずるところに従い、従来どおり専守防衛を目的とする日本独自の安全保障体制を整え平和憲法下における独立国家として当然行なうべき努力を遂行しようと思っております。』

 そして、相手が発射する前に探知し攻撃するのであれば、たとえ自衛のためだったとしても「先制攻撃はしない」としてきた従来の主張ともぶつかり合うこととなる

 これに対して『攻撃は最大の防御』とは「防御をする前に先手をうって攻撃を仕掛けることが一番の防御方法」という意味。「攻撃」を先に行えば「防御」する必要がなくなる。このことから、有効な防御方法とは、先手をうって「攻撃」する事と表現しているが、現状の日本国憲法ではこの「防御」は出来ない。

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