ホリショウのあれこれ文筆庫

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第208話 生活保護制度の課題

序文・弱者救済制度の悪用は断じてならない

                               堀口尚次

 

 生活保護は、国や自治体が「健康で文化的な最低限度の生活」を日本国民に保障するためとして設けている公的扶助制度。日本国憲法第25条や生活保護法の理念に基き、生活に困窮する国民に対して、資力調査を行いその困窮の程度によって、要保護者に必要な扶助を行い、最低限度の生活を保障するとともに自立を促すことを目的とする。生活保護生活保護法に定める補足性の要件を満たす限り、全ての国民に無差別平等に適用される。生活困窮に陥った理由や過去の生活歴や職歴等は問わない。この原則は法の下の平等によるものである。

 生活保護は、資産〈預貯金・生命保険・不動産等〉、能力〈稼働能力等〉や、他の法律による援助や扶助などその他あらゆるものを生活に活用してもなお、最低生活の維持が不可能なものに対して適用される。民放に定められた扶養義務者の扶養及びその他の扶養は、生活保護に優先して実施される。 保護の実施機関は、保護の実施に際し被保護者や要保護者に対して法に基づき必要な指示〈例えば生活の経済性や他者に及ぼす危険性に関して、最低限度の生活を超える部分での自動車の保有・運転に関する制限など〉をすることがあり、その指示に従わない場合は保護の変更、停止又は廃止がなされる。

 問題になっているのは生活保護の不正受給」だ。所得隠しによる不正受給、暴力団などによる不正受給、生活保護ビジネス、福祉事務所職員による不正受給〈不正支給〉など、手口は様々だが、血税を横取りするなど言語道断であり、本来本当に生活に困窮している生活保護受給者への偏見に繋がる行為である。

 ただし一方では、現行の受給者への不正調査に関して、マンパワー不足や調査権限の欠如による限界も指摘されている。一例として、小田原ジャンパー事件という、2007年より10年にわたり生活保護業務を担当する小田原市職員が差別的な文章が記載されているジャンパー等を着用し業務を行っていた事件が発生している。報道を受けて小田原市には電話やメールが殺到した。寄せられた意見のうち過半数は批判的な内容だが、他方で「不正を許さない気持ちは大事」など、職員らに賛同する意見も4割以上も寄せられた。このように「応援」の声が寄せられたということに、日本における生活保護バッシングの根の深さがある生活保護憲法上の権利であるはずなのに、恩恵や慈悲のように感じている住民は少なくない。生活保護職場では「保護だけは利用したくない」「保護を利用していることは絶対に知られたくない」という住民や利用者の声も多い。ことさら不正を強調して生活保護を圧迫すれば、本来保護が必要な状態の人が、制度からこぼれ落ちることになってしまっては本末転倒だろう。

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