ホリショウのあれこれ文筆庫

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第209話 日本の捕鯨の歴史と問題点

序文・小学校の給食でよくクジラ肉を食べました

                               堀口尚次

 

 日本では、明治時代に西洋式捕鯨技術が導入される前、先史時代から独自の技術で捕鯨を行っていた。江戸時代には、鯨組と呼ばれる大規模な捕鯨集団による組織的捕鯨が行われていた。明治時代には遠くの南極海などの外洋にも進出して捕鯨を操業、ノルウェーやイギリスと並ぶ主要な近代捕鯨国の一つとなった。捕鯨の規制が強まった現在も、日本は捕鯨を継続する数少ない国の一つ。

 日本の捕鯨は、勇魚取(いさなとり)や鯨突(くじらつき)と呼ばれ、古くから行われてきた。その歴史は、先史時代の捕鯨から、初期捕鯨時代〈突き取り式捕鯨・追い込み式捕鯨・受動的捕鯨〉、網取式捕鯨時代、砲殺式捕鯨時代へと分けることができる。かつて弓矢を利用した捕鯨が行われていた見解もあったが、現在では否定されている。

 江戸時代の鯨組による網取式捕鯨を頂点に、日本独自の形態での捕鯨が発展してきた。突き取り式捕鯨・追い込み式捕鯨・受動的捕鯨は日本各地で近年まで行われていた。突き取り式捕鯨・追い込み式捕鯨はイルカ追い込み漁など比較的小型の鯨類において現在も継続している地域もある。また、受動的捕鯨座礁したクジラやイルカの利用〉についても、一部地域では慣習〈伝統文化〉として食用利用する地域も残っている。

 一般的に捕鯨と反捕鯨の対立とされる場合も多いが、中立的な立場や、捕鯨自体には賛成するもののその方向性において様々な立場があり、捕鯨と反捕鯨の対立という短絡的な解釈には問題があり、現実の構図はこの一般的理解よりもはるかに複雑であり、問題を単純化、一般化するのは必ずしも容易ではない

 最新の食肉用家畜の屠殺(とさつ)においては、専用の道具〈主に屠殺銃〉および炭酸ガス麻酔法を用いた安楽死が多いのに対し、鯨は専用施設内での殺処理が行えず、致命傷でなければ死ぬまで時間がかかり、動物福祉の観点から非人道的であるとされる。乗組員の安全性や人道的視点などからの致死時間短縮は比較的古くからの課題であり、鯨を感電死させる電気銛などの研究が戦前からあった。日本でも1950年代に電気銛の試験が行われ、鯨の即死が確認されたものの、有効射程の短さなど運用上の困難から主力にはならなかった。

 人間は、動物(牛や豚に代表される)や魚など生物の命をいただいて生きている。どんな生物の命をいただくかは、民族の歴史によって違う。人道的な視点から考えたら、食用の家畜自体が否定されてしまう。問題は、倫理に及ぶ。

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