ホリショウのあれこれ文筆庫

歴史その他、気になった案件を綴ってみました。

第300話 見張り塔からずっと

序文・ものみの塔

                               堀口尚次

 

 「ここから抜け出す手段があるはずだ」道化師は盗人に言った
「混乱ばかりで休めやしない。事業家どもは俺のワインを飲み 農夫どもは俺の土地を耕す やつらの誰一人としてその価値をわかっちゃいない」

 

 「そんなにイラつく事じゃないさ」盗人は優しく話した
「俺達の仲間には人生はただの冗談だと思っている奴がたくさんいる。
だけどアンタと俺は、そんな考えを乗り越えてきたし
そんな運命を背負っちゃいない 心にもない事を話すのは止めにしよう
夜も更けてきた」

 

 見張塔からずっと王子たちは眺めていた
女たちが裸足の召使を従え行ったり来たりする様子を。
外側の、遠くの方ではヤマネコが唸り
2人の馬に乗った者が近づいて来て風がざわめき始めた

 

 これは、ボブ・ディランが1968年に発表した名曲「見張り塔からずっと〈邦題〉」の歌詞〈和訳〉です。ジミ・ヘンドリックスがカバーして本家を凌ぐヒットとなった。タイトルにある「見張り塔」とは、櫓(やぐら)のような、外部の敵などを見張る為の塔のこと。この言葉は聖書にも登場し、「ものみの塔」等と訳されている。歌詞の後半部分は、旧約聖書 イザヤ書の「バビロニア帝国の崩壊を伝える使者」との類似点が指摘されている。ボブ・ディランの詞の中でも難解なものと言われ、歌詞に登場する人物についても、宗教・哲学・音楽業界などの視点から、様々な解釈や憶測が生まれた。

 イーグルスの大ヒット曲「ホテル・カリフォルニア」の歌詞も難解といわれているが、共通するものを感じる。音楽産業といいう商業主義の世界から抜け出せなくなっているジレンマみたいなものを・・・。

 ボブ・ディランは、社会批判や反体制的な言葉こそ使っていないが、見事にそれを暗示させている。そういえば、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」も、商業主義〈金で何でも買える〉への警鐘が聴こえてくるような気がする。

f:id:hhrrggtt38518:20220416043210j:plain