ホリショウのあれこれ文筆庫

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第309話 六曜の成り立ちと昨今

序文・根拠のない迷信

                               堀口尚次

 

 六曜(ろくよう)は、暦注(れきちゅう)〈暦(こよみ)に記載される日時・方位などの吉凶、その日の運勢などの事項〉の一つで、先勝(せんしょう)・友引(ともびき)・先負(せんぶ)・仏滅(ぶつめつ)・大安(たいあん)・赤口(しゃっこう)の6種の曜がある。

 日本では、暦の中でも有名な暦注の一つで、一般のカレンダーや手帳にも記載されていることが多い。今日の日本においても影響力があり、「結婚式は大安がよい」「葬式は友引を避ける」など、主に冠婚葬祭などの儀式と結びついて使用されている。

 六輝や宿曜(ろっきすくよう)ともいうが、これは七曜(しちよう)〈肉眼で見える惑星を五行(ごぎょう)=古代中国に端を発する自然哲学の思想 と対応させた火星・水星・木星・金星・土星と、日(太陽)・月(太陰(たいいん))を合わせた7つの天体のこと〉との混同を避けるために、明治以後に作られた名称である。

 仏滅や友引という、仏事と関連のあるように見える言葉が多く使われているが、仏教との関係はない。仏事と関連のあるように見える言葉が多いのは当て字によるものである。占いを盲信して本質がおろそかになればかえって悪い結果になるとして、仏教では占いを否定している。また、日本仏教の宗派の一つである浄土真宗では親鸞が「日の吉凶を選ぶことはよくない」と和讃で説いたため、迷信、俗信一般を否定して、仏教においては本質的に因果関係によって物事が決まり、六曜が直接原因として物事を左右することはないとする。

 第二次世界大戦後は政府による統制も廃止され、六曜などの暦注を付したカレンダーも一般に販売され広く用いられている。しかし、行政をはじめとする公共機関が作成するカレンダーでは使用せず、掲載を取りやめるよう行政指導を行っている機関もある。これは、根拠のない迷信であること、無用な混乱を避けるなどの理由による。しかし現代でも、冠婚葬祭の日程を決める時には六曜を意識して決める人がいる。ただ自分たちは気にしないが、親や祖父母や結婚式場のスタッフに言われたから、参加者に非常識だと思われないようになど、世間体を気にして仕方なく六曜を考慮しているケースもある。また最近は六曜の記載がないカレンダーが増えてきたことや、携帯電話等で予定を管理するなど、カレンダーやスケジュール帳自体を購入しない10代・20代の若者も増えているので、六曜を知らないという人もいるほどである。