ホリショウのあれこれ文筆庫

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第333話 炭坑節

序文・サノヨイヨイ

                               堀口尚次

 

 炭坑節は、福岡県に伝わる民謡である。現在の田川市が発祥といわれる。

もともとは炭坑労働者によって唄われた民謡『伊田場打選炭唄』が原曲で、「月が出た出た月が出た、ヨイヨイ」の一節で知られる。もともとは盆踊り唄ではなかったものの、戦後全国的に流行してからは伝統的な盆口説などにとってかわって盆踊り唄として唄われるようになった。この曲は、元々は春歌(しゅんか)〈性風俗に関連した猥褻(わいせつ)な内容の歌詞を含む楽曲〉だったともいわれる。

 『日本のうた 第一集 明治・大正』P.221によれば、浪花節から派生した俗曲「奈良丸くずし」〈大正2年〉 の三番の歌詞「月が出た出た月が出た/セメント会社の上に出た/東京にゃ煙突が多いから/さぞやお月様煙たかろう」は東京・江東区での煙突が並ぶ風景を歌い、のちの炭坑節の元となった。

月が出た出た 月が出た(ヨイヨイ)
三池炭坑の 上に出た
あまり煙突が 高いので
さぞやお月さん けむたかろ(サノヨイヨイ)

あなたがその気で 云うのなら(ヨイヨイ)
思い切ります 別れます
もとの娘の 十八に
返してくれたら 別れます(サノヨイヨイ)

一山 二山 三山 越え(ヨイヨイ)
奥に咲いたる 八重つばき
なんぼ色よく 咲いたとて
サマちゃんが通わにゃ 仇の花(サノヨイヨイ)

晴れて添う日が 来るまでは(ヨイヨイ)
心一つ 身は二つ
離れ離れの 切なさに
夢でサマちゃんと 語りたい(サノヨイヨイ)

 私なんかは、この曲といえば、幼少の頃の近所の盆踊りを思い出す。簡単で単調な繰り返しの振り付けは、子供でもすぐに覚えられ、楽しく踊ったもんだ。そんな曲〈炭坑節〉にも、炭坑労働者の血と汗が滲む苦労が隠されていたのだ。再度思い直してこの曲を聴いてみた。