ホリショウのあれこれ文筆庫

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第365話 土用の丑の日

序文・いつたべても美味しい

                               堀口尚次

 

 土用の丑の日は、土用の間のうち十二支が丑の日である。「土用」とは五行思想〈古代中国に端を発する自然哲学〉に基づく季節の変わり目を意味する雑節(ざつせつ)〈節分・彼岸・八十八夜など季節の移り変りをより適確に掴むために設けられた、特別な暦日のこと〉で、四季の四立(しりゅう)〈立春立夏立秋立冬〉の直前の約18日間を指す。この期間中の丑の日は、年に平均6.09日あることになる。

 一般には、夏の土用の丑の日のことを、単に土用丑の日と言うことが多い。夏の土用には丑の日が年に1日か2日〈平均1.57日〉あり、2日ある場合はそれぞれ一の丑二の丑という。

 春の土用の丑には「い」、夏の土用の丑には「う」、秋の土用の丑には「た」、冬の土用の丑には「ひ」の付く食べ物をとると良いとされ〈土用の食い養生〉、特に夏の土用の丑の日には鰻を食べる風習が江戸時代からみられる。

 鰻を食べる習慣についての由来には諸説あり、「讃岐国出身の平賀源内が発案した」という説が最もよく知られている。しかし、平賀源内説の出典は不明である。源内説は細かなバリエーション違いがあるが、要約すれば「商売がうまく行かない鰻屋〈知り合いの鰻屋というパターンもある〉が、夏に売れない鰻を何とか売るため源内の元に相談に赴いた。源内は、「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めた。すると、その鰻屋は大変繁盛した。その後、他の鰻屋もそれを真似るようになり、土用の丑の日に鰻を食べる風習が定着した」というもの。丑の日と書かれた貼り紙が効力を奏した理由は諸説あり定かではないが、一説によれば「丑の日に『う』の字が附く物を食べると夏負けしない」という風習があったとされ、鰻以外には瓜、梅干し、うどん、うさぎ、馬肉〈うま〉、牛肉〈うし〉などを食する習慣もあったようだが、今日においては殆ど見られない。

 実際にも鰻にはビタミンA・B群が豊富に含まれているため、夏バテ、食欲減退防止の効果が期待できるとされているが、栄養価の高い食品で溢れる現代においてはあまり効果は期待できないとされる。そもそも、鰻の旬は冬眠に備えて身に養分を貯える晩秋から初冬にかけての時期であり、夏のものは味が落ちるとされる。まあ、商売繁盛で考え出した商人の勝ちですなぁ・・・