ホリショウのあれこれ文筆庫

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第376話 蒸気機関車・D51

序文・大量の水が必要

                               堀口尚次

 

 蒸気機関車とは、蒸気機関を動力とする機関車のことである。

日本では Steam Locomotive の頭文字をとって、SL〈エスエル〉とも呼ばれる。また、蒸気機関車、または蒸気機関車が牽引する列車のことを、汽車とも言う。また、明治時代には蒸気船に対して陸の上を蒸気機関で走ることから、「陸(おか)蒸気」とも呼んでいた。第二次世界大戦の頃までは「汽罐車(きかんしゃ)」という表記も用いられた〈「汽罐」はボイラーの意〉。※ボイラーは、水を沸かし、湯や水蒸気をつくりだす設備や装置のこと。

蒸気機関車は湯を沸かして発生した蒸気を動力源として走行する。このため「燃料としての石炭」と「水蒸気を作るための水」が大量に必要となる。運転には、走行操作をする機関士とボイラーに水や石炭を送る操作をする機関助士の2人が必要となる。燃料と水を補給する必要があり、大型機では約100kmごとに補給が必要。そのため、駅や機関区などに水・石炭などの補給や、使用済みの石炭ガラ処理用の大型設備が必要となる。ボイラーの上部には蒸気圧が高くなりすぎたときに蒸気を逃がして圧力を下げる安全弁〈万が一の故障を考慮して必ず複数が装備される〉や、汽笛が装備されている。

 D51蒸気機関車は、日本国有鉄道国鉄〉の前身である鉄道省が設計、製造した、単式2気筒で過熱式のテンダー式蒸気機関車である。

 主に貨物輸送のために用いられ、太平洋戦争中に大量生産されたこともあって、国鉄における所属総数は1,115両に達しており、ディーゼル機関車電気機関車などを含めた日本の機関車1形式の両数でも最大を記録した。この記録は現在も更新されていない。

 現場の機関士にも操作性の良さから人気があり「デゴイチ」の愛称は、日本の蒸気機関車の代名詞にもなった。

 あの哀愁のある汽笛の音は、蒸気機関車の構造上必要不可欠な蒸気を逃す安全弁を利用していたのだ。明治から大正昭和初期と活躍した蒸気機関車は、SLとして今も鉄道ファンを魅了して止まないようだ。運転士もさることながら機械メンテナンスに携わる鉄道マン達の鼓動が、今も響き続けている。