ホリショウのあれこれ文筆庫

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第414話 国鉄三大ミステリー事件

序文・旧国鉄民営化以前の黒歴史

                               堀口尚次

 

 国鉄三大ミステリー事件とは、連合国軍占領下の日本において昭和24年の夏に相次いで発生した、日本国有鉄道にまつわる真相に謎が残る三つの事件の通称。今回は、付随する関連事件も列記する。

山事件 国鉄総裁下山定則が出勤途中に失踪し、翌日未明に轢(れき)死体となって発見された。自殺なのか他殺なのかが争点になった。死体が生体轢断〈自殺の根拠〉か死後轢断〈他殺の根拠〉かで大きな争点となった。捜査一課は自殺説を主張、警視庁捜査二課が他殺説を主張した。最終的には他殺説及び自殺説について公式の捜査結果を発表することなく捜査を打ち切った。

三鷹事件 無人列車が暴走し脱線。死者6人、負傷者20人を出した。国鉄労働組合員11人が起訴された。裁判では10人の共産党員に無罪判決が出て1人の非共産党員に死刑判決が確定した。

松川事件 故意にレールが外され列車が脱線。死者3人を出した。国鉄労働組合員10人と東芝松川工場労働組合員10人の計20人が起訴された。裁判ではアリバイが成立して全員の無罪判決が確定した。

 これらの三事件では、GHQが事件を起こし国鉄労組や共産党に罪をなすりつけて、人員整理をしやすくした」とする陰謀論が存在する。1人の有罪が確定した三鷹事件もアリバイの存在や供述の変遷などから、冤罪疑惑が指摘されており、獄死した元死刑囚の家族により再審申し立てがされている。

 他にも当時の国鉄では松川事件と類似した列車脱線事件として以下の事件が発生した。いずれも未解決。庭坂事件 列車往来危険事件。死者3人。予讃線事件 列車転覆事件。死者3人。⑥まりも号脱線事件 列車往来危険事件。軽傷者1人。

 GHQは、ハイパーインフレーションにあえぐ日本経済の立て直しを急ぎ、緊縮財政策を実施する。同年には行政機関職員定員法を施行し、全公務員で約28万人、同日発足した日本国有鉄道国鉄に対しては約10万人近い空前絶後人員整理を迫った。下山国鉄総裁は人員整理の当事者として労組との交渉の矢面に立ち、事件前日には、3万人の従業員に対して第一次整理通告〈=解雇通告〉が行われた。国鉄が人員整理を起こそうとしていたことから、人員整理に反対する国鉄労組による犯行という観点から捜査が進められた。

三鷹事件               ※松川事件