ホリショウのあれこれ文筆庫

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第461話 身分なき共犯

序文・一蓮托生

                               堀口尚次

 

 「身分なき共犯」とは、身分はないが、身分犯〈構成要件において行為者が一定の身分をもつことを必要とする犯罪〉の犯行に加担した者。収賄背任罪などの、公務員や幹部など一定の立場にあることが成立の必要条件となる犯罪も、共犯者と認められれば同様に処罰される

 防衛装備品調達をめぐる防衛省汚職事件では、2007年11月28日に、収賄容疑で前防衛事務次官とともに、その妻が逮捕された。収賄罪は、公務員という身分が犯罪の構成要件となるが、公務員ではない民間人の妻に同容疑の「身分なき共犯」が適用されたことで、関心が高まっている。この事件の他に、「身分なき共犯」が適用されたケースは、06年10月に、前福島県知事の実弟が、県の発注した大型ダム工事をめぐり、ゼネコンからわいろを受け取ったとして、前知事と同じく収賄容疑で逮捕された事件などがある。また、07年10月には、奈良の医師宅放火殺人事件を起こした長男〈事件当時16歳〉の供述調書を引用した単行本の発刊に関して、長男の鑑定医の一人が、調書や鑑定書を漏らしたとして、秘密漏示罪〈刑法第134条〉で起訴され、単行本の著者であるフリージャーナリストも「身分なき共犯」の可能性があるとして捜査を受けたが、不起訴となり、多方面からの議論をよんだ。

 直近の事例では、津市が運営するボートレースのテレビCMの契約で便宜を図った見返りに業者から賄賂を受け取ったとして、三重県警は7日、津市ボートレース事業部経営管理課主幹の畑充彦容疑者と、三重テレビ放送東京支社営業部の酒井輝容疑者を収賄容疑で逮捕した。発表によると、両容疑者は2019年1月中旬、市が発注したボートレースのテレビCM放送業務を随意契約で受注できるよう便宜を図るなどした見返りに、広告会社の役員から現金十数万円を受け取った疑い。2人は容疑を認めている。酒井容疑者は公務員ではないが、県警は畑容疑者と共謀したとする「身分なき共犯」として逮捕した。贈賄側は公訴時効〈3年〉が成立している。

 昔から「一蓮托生」というが、これは仏教用語で、本来『死後、極楽浄土で同じ蓮華の上に生まれること。』転じて、ものごとの善悪や結果のよしあしに関係なく最後まで行動、運命を共にすることと解釈されるが、身分がなくても、犯罪に加担したのなら、共犯者として裁かれることは当然の報いだろう。