ホリショウのあれこれ文筆庫

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第462話 日本の警察官の拳銃

序文・国産銃の開発

                               堀口尚次

 

 ニューナンブM60は、新中央工業〈後にミネベア→現・ミネベアミツミに吸収合併〉社製の回転式拳銃。昭和35年より日本の警察官用拳銃として調達が開始され、その主力拳銃として大量に配備されたほか、麻薬取締官海上保安官にも配備された。生産は平成2年代に終了したが、現在でも依然として多数が運用されている。

 内務省警視庁および府県警察部時代、日本の警察官は基本的にサーベルを佩用(はいよう)〈身に着ける〉するのみで、銃火器の装備は刑事や特別警備隊、要人警護要員や外地の警察部など一部に限定されていた。その後、連合国軍占領下の日本では警察官の帯刀を廃止し拳銃を携行することになったため、もともと保有していた拳銃だけでは足りず、日本軍の武装解除や民間からの回収によって入手された国産の拳銃も用いられていたが、それでも充足率は低く、また配備された拳銃も老朽品が多く、種類も雑多であった。昭和24年夏よりこれらの拳銃はGHQに回収され、かわってアメリカ軍の装備からの供・貸与が開始された。しかしこれらの供与拳銃にも老朽品が多く、その中でも特にM1911A1自動拳銃とM1917回転式拳銃は耐用年数を過ぎて動作不良や精度低下を来していたほか、使用弾薬が45ACP弾だったため警察用としては威力過大であり、大きく重いために常時携帯の負担が大きいという不具合も指摘されていた。60年安保対策として警察官が増員され、再び銃器の充足率が低下していたこともあり、まず昭和34年よりS&WM36などの輸入による新規調達が開始された。

 しかし一方で、国内産業の涵養(かんよう)〈無理をしないで少しずつ教え養うこと〉や製作技術の存続を図る観点から、防衛庁警察庁法務省海上保安庁などが装備する公用拳銃の統一化・国産化が志向されるようになっており、昭和31年9月、日本兵器工業界は、通商産業省の指導のもとで拳銃研究会を設置して検討に着手した。そしてその検討を踏まえて、昭和32年より、新中央工業において国産拳銃の開発が開始された。このとき、自動拳銃2機種と回転式拳銃1機種が開発されたが、この回転式拳銃が本銃であり、当初はM58と称されていた。M58は昭和34年11月に行われた外国製拳銃との性能審査で優良な成績を納め、昭和35年より警察への納入が開始された。昭和43年度以降、警察が調達する拳銃は本銃に一本化されることとなった。