ホリショウのあれこれ文筆庫

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第469話 屋根神

序文・風前の灯火

                               堀口尚次

 

 屋根神(やねがみ)または屋根神様は、家屋の屋根の上に祀られた祠。愛知県や岐阜県などで見られる。

 古い家屋の一階ひさし屋根や軒下などに設置され、一般に火伏の秋葉神社や厄よけの津島神社のほかに伊勢神宮氏神〈名古屋では熱田神宮〉をまつり、町内や隣組といった地域の小組織で祭祀を行う。

 ひさし屋根や軒下など地面より高いところにまつることから「屋根神」と呼ばれるようになったが、「秋葉さん」「お天王さん」と祭神を差して呼ぶ場合も多く、ほかに「軒神さま」、単に「町の神さま」「町内神社」「氏神さん」などと呼ぶ地域もある。現在では屋根や軒下など高所に上がっての祭祀が危険という理由から地上におろされた社も多いが、もとは屋根にあったので「屋根神」という名前を使用することが多い。通常、親しみを込めて「屋根神さま」と呼ばれる。名古屋市内では戦災被害の少なかった西区に多く残り、次いで中村区、中区と続く。2009年時点では名古屋市に135社の屋根神が残っていた。

 都市化による再開発や地域共同体の縮小、祭礼を中心的に執り行ってきた人々の高齢化、交通量の増加等により従来から続いてきた祭礼の簡素化や廃止が進み、その数は減少傾向にある。愛知県尾張三河地方、岐阜県美濃・飛騨地方にも見られるが、名古屋市や周辺地域が熱田・秋葉・津島の三社をひとつの社殿で祀るのに対し、名古屋市以外では秋葉単体、もしくは伊勢神宮氏神などと合わせまつられていることが多い。また単体の津島神社と並べてまつるケースもある。祭礼は町内や隣組など小組織が輪番制で行う。名古屋市の例を見ると、百数十戸が数組に分かれ当番で世話をする「大町内」もあれば、道を挟んだ数戸が持ち回りで世話をする「隣組」もあり、祭礼単位は様々である。また近年居住者の少なくなった長屋では一戸で神さまを守っているケースもある。祭神の祭礼日には、お札や提灯の中心を祭礼日の祭神にする(秋葉祭なら秋葉神社の札を中心に)。地域によっては祭礼時に神主を呼ぶところもある(秋葉神社の祭礼の場合、神仏混合の信仰であることから神主の代わりに僧侶や修験者が神主の代わりを勤めることがある)。

 私は過日、名古屋駅近くの通称「四家道(しけみち)」で屋根神様を確認してきた。