ホリショウのあれこれ文筆庫

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第480話 多宝塔に魅せられて

序文・日本建築の美

                               堀口尚次

 

 多宝塔は、寺院建築のうち仏塔における形式のひとつである。現代の寺院建築用語・文化財用語としては、一般に、平面が方形〈四角形〉の初層の上に平面が円形の上層を重ね、宝形造〈四角錐形〉の屋根を有する二層塔婆を「多宝塔」と呼称する。以前に尾張四観音で笠寺観音荒子観音龍泉寺観音の多宝塔を紹介しましたが、愛知県内のその他の多宝塔を訪ねてみた。

知立市知立神社の多宝塔

 室町時代後期の永世6年の再建とされる。三間四方の2層の塔で、塔高は約14.5メートル、屋根は杮(こけら)葺(ぶき)、四隅には宝珠を置く。明治元年廃仏毀釈の際には、本尊愛染明王・仏壇を塔内から除いて文庫に改めたため、難を逃れている。その後、大正9年の解体修理で復元された。なお、塔内にあった本尊は現在総持寺にある。この多宝塔は、神宮寺の遺構を伝える全国でも珍しい例とされ、国の重要文化財に指定されている。

岡崎市大樹寺の多宝塔

 大樹寺は徳川家〈松平家〉の菩提寺。塔全体がおだやかな和様でまとめられており、入念丁寧に造られた建築。国の重要文化財

春日井市・密蔵院の多宝塔

 禅宗様を取り入れた優美な姿であり、室町時代中期の建立と考えられており、国の重要文化財

稲沢市・性海寺と萬徳寺の多宝塔

 性海寺は、毎年6月1日頃から「稲沢あじさいまつり」を開催している。園内には、「伊豆の華」「カシワバアジサイ」「城ケ崎」など約90種1万株のあじさいがある。萬徳寺は、境内面積は1200坪。4月下旬には境内のぼたんが咲き、「ぼたん寺」として知られている。

犬山市・泉浄院の多宝塔

 奈良県生駒の信貴山真言宗の別格・尾張信貴山と呼ばれている。

 この他にも、名古屋市興正寺の多宝塔も訪れた。なぜ多宝塔にこれほどまでに魅せられたのかは、私にも分からない。仏様のお導きなのかどうか知るところではないが、神仏の御加護が頂ければ幸いだ。若いころから仏教の勉強はしてきたが、信仰心は高くない。願わくば、囚われのない巡礼を続けたい。