ホリショウのあれこれ文筆庫

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第483話 取引業者いじめの闇

序文・闇シリーズ③

                               堀口尚次

 

 テレビドラマで「競争の番人」というのがやっていた。私は小売業の経験から、興味深く観ていた。なぜならば私は、独占禁止法の優越的地位の濫用を目の当たりにしてきたから。排除措置命令という行政処分の裏側を垣間見てきた。

 2012年に家電量販店のエディオンが、納入業者から従業員を派遣させ、無償で店舗の業務を手伝わせたとして摘発され、排除措置命令が下ると共に、40億4796万円の課徴金納付を命じられているが、私がいた小売業でも店舗の改装となると微小な協力応援金は支払っていたが、その管理はずさんだった。また、新店舗開店応援の場合は、この協力応援金は支払われなかった。

 公正取引委員会は、小売業者による優越的地位の濫用行為として「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」で、押し付け販売、返品、従業員等の派遣の要請、協賛金等の負担の要請、および多頻度小口配送等の要請などを上げているが、私は職務上、取引業者への返品を管理する立場にあったが、一部の仕入れ担当者〈いわゆるバイヤーみたいな人〉に返品管理のずさんな人もおり、私の立場から「優越的地位の濫用にあたり独占禁止法に抵触するおそれがある」として改善を求めたが、失笑されて終わってしまった。

 現場での取引業者に対する態度に関しても、横柄どころか恫喝している現場も見ている。これは特に弱小〈取引が少ない〉業者に対することが多く、優越的地位の濫用に他ならなかった。最も驚いたのは、間違いを犯した取引業者に対して正座させて説教する場面を見た時だった。勿論間違いを起こしたことは取引業者側に問題があり、後日その取引業者の上司が詫びに来たそうだが、そのことと、大勢の目の前で正座させ説教することは別で、侮辱行為に他ならない。態度が悪い取引業者に「出入り禁止」なんてレッテルを貼っていたのだ。

 しかしこの「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」は曲者(くせもの)で、多頻度小口配送は、今や小売業の要(かなめ)〈特にコンビニ〉であり、世界のトヨタのジャスト・イン・タイムに代表されるように、売り手側かの視点では最優先される手法なのである。問題は、商取引きはあくまでも対等であるという前提があってこそ成り立つものであり、優越的な地位を濫用してはいけないということだが、このあまりのも抽象的な表現が取引業者いじめを生み出していたのだ。