ホリショウのあれこれ文筆庫

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第493話 店舗出店戦略の闇

序文・闇シリーズ⑤

                               堀口尚次

 

 私は退職した会社で、一時期店舗開発の部署に在籍していた。希望する場所に出店するために、不動産業者やゼネコン〈建設会社〉を訪問し、情報交換をする日々が続いた。私が担当したエリアは、すでに競合他社や自社の出店が飽和状態であり、おいそれと出店できる情況になかった。

 小売業では出店方法の一つに「ドミナント出店戦略」というものが存在する。これは、一見自社競合するような商圏にあえて出店して、エリアで自社の商圏を確保しようとするもの。当然、自社競合するわけだから、既存店の売上は減少する。だが他社競合に出店されて自社既存店の売上を落とすより、自社競合でトータルの売上をそのエリアで確保するというものだ。コンビニなんかが顕著に見受けられる。

 同業種他社に出店されないように、異業種への出店紹介誘致みたいな手法もあった。稀であるが、行政〈土地開発公社など〉が関係してくる場合もあり、入札に関する駆け引きなどの世界も、少し垣間見たりした。私は直接関係なかったが、上司〈部長課長級〉などは、商工会議所や地元有力者との接待に数十万円を費やしているようだった。

 ややこしかったのは「大規模小売店舗立地法」という法律の壁だ。出店地元との調整や駐車場の台数確保など様々な諸問題が山積していた。また政治家〈地元市会議員〉などが絡む場合もあり、根回しの難しさや重要性を知ることが出来た貴重な体験だった。

 更には「スクラップ&ビルド」という手法も勉強した。文字通り、古い店舗を閉店させ、新しい店舗を建築する手法だ。採算の合わない既存店を閉店させ、最新の店舗を同位置か或いは近隣場所に再出店させる手法だ。

 またデベロッパーと呼ばれる不動産開発業者も暗躍しており、先輩社員に連れられて、見るからに怪しい事務所への訪問も行ったが、確かに怪しい物件を紹介されたりもした。さすがに私がいた会社は、一応上場企業だったので、いわゆる「地上げ屋」みたいな手法は取らなかった。

 大手GMS〈ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア〉=総合スーパーとの共同出店なんかで、こちらが家主になり賃貸料をもらうケースもあった。小売業といっても、不動産業みたいなことするんだなあと思った。