序文・マナー違反ではなく違法行為
堀口尚次
不正乗車とは、鉄道を初めとする旅客輸送の旅客が、その乗車において、定められた乗車券類を所持せずに運賃・料金を不正に免れようとする行為。
折り返し乗車とは、いったん目的地と逆方向の駅に行って折返し、そのまま目的地に行く行為である。折り返す区間の運賃を払わなければ特例〈分岐駅を通過する列車に乗車する場合など〉で認められている場合を除き、不正乗車となる。目的地までの区間外の駅にある駅ナカ施設へ行ったり、ラッシュ時に着席するために列車の始発駅あるいはその近くの乗客の少ない駅まで行って折り返し、目的地に行ったり、優等列車の通過駅から逆方向にある優等列車の停車駅に行って折り返し、本来乗る予定の列車を途中で通過して追い越し、目的地に早く到着したりする事例がある。
終着駅や始発駅手前駅の通勤定期券利用者〈通学定期券は自宅と学校最寄駅から最短・最速・最安のいずれかに該当する区間しか買えないので伸ばすことが出来ない〉はそこまでの定期券を所持していることが多いが、東急東横線横浜駅からの乗客が、朝ラッシュ時に馬車道駅やみなとみらい駅で折り返して渋谷方面へ向かう行為が指摘された例があり、横浜高速鉄道は啓発ポスター掲示や監視を行っている。
ただし旅客が誤って区間外に乗車してしまった場合〈目的地の駅に停まらない優等列車に乗ってしまいその先の駅まで行ってしまった場合など〉は不正乗車とはならず、無賃送還の対象となる。なお、定期券利用者に対しては無賃送還の扱いが限定されている。定期に使うことを前提にしているため、誤っての乗車は限られるからである。
区間の連続しない2枚以上の乗車券類を使用して、その間〈乗車券を持っていない〉の区間を乗車した場合、これは不正乗車に当たる。これを中間無札と呼ぶ。一般的にはキセル乗車と呼ばれることが多い。この意味の由来は、両端が金属、中央が竹でできている煙(きせ)管(る)とかけて、「両端だけ金(かね)を使っている」ということに掛けている。