ホリショウのあれこれ文筆庫

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第513話 女性天皇と女系天皇

序文・天皇の血筋

                               堀口尚次

 

 女性天皇は、日本における天皇の位皇位を継承した女性のこと。歴代の天皇は、初代の神武天皇から第126代の今上天皇徳仁〉まで129人〈南北時代の北朝を含む〉の天皇がその位にあり大半は男性であるが、その内8人〈10代〉が女性である。古来、皇位の継承は男系に限定しており、現に皇位にある者と神武天皇を結ぶ男系の血統を、特に皇統と呼ぶ。そのため、皇位を継ぐ皇統、および時の皇統が途絶した際に皇位を傍系から継承する資格を保有した皇族の立場は、父親から息子へ、男性間での世襲により継承されるのが原則だ。

 しかし、皇統を継ぐことが想定されている男性皇族が幼少であり天皇の職務に耐えない場合や、皇位〈長期的には皇統〉を継ぐ皇族が複数名いて調整がつかない場合などは、女性皇族が皇位を継承する場合があった。これらの女性皇族は、本来の皇統の継承者が幼少、未確定などの情勢に応じて一時的に皇位を預かるものであり、中長期的な視点では中継ぎ的存在である。この場合皇位を継承する女性皇族は、直近の男性天皇の未亡人〈皇后〉であるか、皇統を継承する予定の男性皇族の近親の内親王である。

 女系天皇とは、小泉政権下の平成17年時に開催された「皇室典範に関する有識者会議」における議論のなかで登場した架空の概念であり、過去及び現在における男系男子の伝統文化の歴史とは異なる皇位継承を想定して使用されている言葉である。

 本来の意味で「女系」とは、「母方でたどる血統」「女から女へと続いてゆく家系」、「女子だけで継承していく系統」のことであるが、本概念における「女系天皇」の場合の「女系」には、女系血統の連続性の概念は確認できず、当時の「皇室典範に関する有識者会議」では「男女を問わず第一子を優先する」「皇族女子が民間男性と結婚し、その子供に皇位継承権を有する」とする案が出されていた。このため女系天皇」とは、当座の想定概念として、「“母方にのみ天皇の血筋をもつ”人物が天皇になること」を指している。また、親が神武天皇〈初代天皇〉から続く男系の血統ではなく、母親のみが神武天皇の血統である人物が、先例にない天皇になることを想定して使用されている言葉である。よって、男系の皇族女子が天皇になる女性天皇とは全く異なる。