ホリショウのあれこれ文筆庫

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第526話 情操教育

序文・体験という財産

                               堀口尚次

 

 情操教育とは、感情や情緒を育み、創造的で、個性的な心の働きを豊かにするためとされる教育、および道徳的な意識や価値観を養うことを目的とした教育の総称。

 情操とは、高い精神活動に伴って起こる感情、情緒より知的で安定感があり、持続できでの勤労体験学習〈体験学習〉も、この一環として理解されることが多い。また、国語については、文学作品の鑑賞などにおいて、情操教育の性格を持つものとみなされる傾向がある。

 しかし、「情操教育」という用語は学校教育でしばしば用いられるものの、明確な定義が難しいとする見解もある。

 この抽象的な概念は、なかなか捉えにくいものであり、言葉では伝わりにくく、体験することで習得していくようなものなのだろうか。

 かつて私が勤務していた小売業では、金魚を販売していたが、販売担当のベテランパートの女性が流暢な店内放送で「お子様の情操城育の一環として、金魚を育ててみてはいかがでしょうか?」とアピールしていたことが思い出される。確かに、幼児期に小動物・観賞魚・昆虫などを飼育することは、生き物を通して生命の大切さを学ぶことになり、感情や情緒が豊かになるのだろう。

 私が通っていた小学校でも、ウサギなどが飼育されていたが、今思えばあれらも「情操教育」の一環だったのだろうか。

 日本人には信仰する宗教もなく、道徳教育もすたれたといわれる昨今、情操教育こそ必要なのではないか。ただしこの教育は幼児期が前提とされており、大人こそに必要な、宗教観や道徳心を養うには自らが教養を高め、一生かけて情操を豊かにしていく心構えが必要なのだろう。

 災害時に駆けつけるボランティア活動を行う人を見るにつけ、頭が下がる。きっとこの人たちは立派な情操教育を受けてきたんだろう。見返りを求めずに、困った人を助けられるその精神力と行動力は、賛美に値する。