ホリショウのあれこれ文筆庫

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第556話 未確認飛行物体

序文・UFO

                               堀口尚次

 

 未確認飛行物体〈 unidentified flying object、UFO〉とは、その名の通り、正体が確認されていない飛行物体のこと。1947年にアメリカの実業家のケネス・アーノルドが、ワシントン州レーニア山頂近くを飛行する一連の円盤状物体を機上から目撃し、flying saucer〈空飛ぶ円盤〉と名付けたのが始まり。国防上の見地からアメリカ空軍が詳細に調査、UFOと総称されるようになった。

 地球上では正体不明の飛行物体の目撃が毎年数百例も報告され、その正体は航空機など既知の人工物体、流星、蜃気楼などで、遠方のサーチライトや自然物〈天体・雲・鳥など〉の誤認も含まれる。

 未確認飛行物体は本来、空軍・軍事用語であり、当局で把握できていない航空機や気象観測用の気球、他国からのミサイルなどさまざまなものを指す。風に流された気球や航路から逸脱した旅客機など悪意はないが事故につながる可能性のある事例もあるが、他国の偵察機爆撃機、ミサイルによる先制攻撃の可能性があり、国家の安全を脅かす危険すらあるためスクランブル〈緊急発進〉の対象となる。空軍などの航空交通管制においては、レーダーに捕捉された正体不明の飛行物体に対しては、それが何であるか確認できるまで、警戒態勢を取る緊急の必要があり、特にレーダー電波を明確に反射する金属製の物は爆撃機やミサイルであるケースも確認されている。「何かがこちらに向かって飛んでくる」という注意を喚起するために「〈方位〉から未確認飛行物体接近」と表現することもあるが、明らかに航空機である場合は「所属不明機」と表現することも多い。

 逆に正体を確認済みのもの〈飛行計画が配信された旅客機や民間貨物機、鳥の集団など〉は確認済飛行物体と総称する。必ずしも物体ではなく、自然現象を誤認する場合もあるため、未確認空中現象が用いられることもある。実際に飛行しているところが目撃されなくても、飛行可能と思われるものが着陸していた場合などにも使われる。水中に目撃されたものは未確認潜水物体ということもある。

 小型の無人航空機や気象観測気球は移動速度が遅いが風で流されることで通常の航空機とは異なる動きをする、小型なためレーダーに映りにくく接近しても目視で捉えにくい、低速なため戦闘機ではすぐに追い抜いてしまうため視認できる時間が短い、スクランブル機が到達する前に着陸・墜落しても痕跡を発見しにくいなど「未確認飛行物体」のまま行方不明となりやすい条件が多く、スクランブルに対応した戦闘機パイロットの体験談が超常現象として流布されることもある。夜間や視界不良時の飛行ではパイロットが星や自然現象を航空機と誤認し報告する事例もある。これらは目視はできるがレーダーに映らないため「レーダーに反応しない機体と遭遇した」という体験談が広まることもある。速度と高度の関係で航空機による接近が難しいため、危険性が低い場合はスクランブルの対応をせずに監視のみという対応もある。

 一口に「未確認飛行物体」といっても「航空・軍事用語として用いている」のか「超常現象用語として用いている」のかを区別する必要がある。未確認飛行物体を超常現象として捉える考えはフィクションの題材として多数用いられており、多くの映画・小説・テレビ番組などが製作・出版・放映されて、興行的成功を収めている〈映画『未知との遭遇』など〉。ユーフォロジーとは未確認飛行物体を超常現象であるという解釈に基づいて行うUFO研究のことである。航空軍事用語としてのUFO〈アメリカ軍の公式用語〉とは意味が異なる。

 UFO目撃現象の分類として、高々度や宇宙空間での目撃、車が追跡された事件、電気的・機械的な影響を及ぼした事件、人間に心理的・物理的影響を与えた事件、着陸の痕跡を残した事件などがある。奇妙な泡を残して、海中に沈む様子が目撃された例もあれば、その姿形は円盤型であったり三角形型であったりと描写はさまざまである。UFOと共に搭乗者が目撃されたり、目撃者がUFO搭乗者による誘拐被害〈エイリアン・アブダクション〉を訴えたりする例もあり、それらは「第3・4種接近遭遇」例とも呼ばれる。