ホリショウのあれこれ文筆庫

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第566話 行方不明の北京原人

序文・日本軍の関与は?

                               堀口尚次

 

 北京原人は、中国北京市竜骨山の森林で発見された化石人類である。学名はホモ・エレクトス・ペキネンシス。2015年現在はホモ・エレクトスの亜種として扱われる。北京原人を含むホモ・エレクトスが生きていた時代は更新正中期である。従来は上記の化石の年代は約50万年前とされていたが、最新の研究では約68万-78万年前と推定されている。

 1921年にスェーデンの地質学者 ユハン・アンデショーンとオットー・ズダンスキーが人類のものと思われる歯の化石を発見した。さらに、その後の調査で1929年12月2日、中国の考古学者である裴文中(はいぶんちゅう)が完全な頭蓋骨を発見した。結果的に合計十数人分の原人の骨が発掘された。

 1940年ごろにはロックフェラー財団に支援を受け、北京に設立された北京協和医学院で保管されていたが、日米関係の悪化によりアメリカへの移送が計画された。1941年12月5日、秦皇島から貨客船「プレジデント・ハリソン」に乗せるためアメリ海兵隊の警護を受けつつ港へ移動したが、真珠湾攻撃により戦争が始まったことで「プレジデント・ハリソン」が拿捕され計画は失敗した。北京原人の骨に関心を持っていた日本軍も捜索したが発見することは出来ず、この日以降行方不明となっている

 1941年以降に行方不明となった骨の化石については、「日本軍に押収されたが空襲で焼けた」「中国の何処かに隠されている」「不老長寿の薬として使われた」など多くの仮説を生み謎のままとなっている。

中国政府では、

①移送前の北京協和医学院での目撃例②アメリカ軍が駐留していた天津市にある病院の地下室で頭蓋骨を詰めた可能性がある箱の目撃例③皇居の地下室に保管されている

を有力情報として捜索を継続している。

 1977年には日本軍に押収され阿波丸で輸送中に撃沈されたという説を元に、潜水調査を行ったが発見には至らなかった。

 先の戦争の傷跡は、こんなところにも及んでいたのだ。