序文・北方領土近海の拿捕の現状
堀口尚次
拿捕(だほ)とは、政府船舶〈軍艦を含む〉が商業船舶に対して乗組員を送り込む方法などによりその権力内に置くこと。拿捕には刑事訴追の前段階となる海上警察措置の一態様としての拿捕と、刑事手続を念頭に置かない武力紛争法〈海戦法規〉における拿捕がある。なお、国連海洋法条約第73条などのarrestも、日本語訳では「拿捕」とされているが、厳密にはarrestは刑事手続の一環として外国船舶を権力下に置くことであり英米海事法上は訴訟手続の開始等の法的効果をもつものをいう。「拿」の漢字が常用漢字表に含まれていないため、報道では「だ捕」と表記されることも多い。沿岸国が海域別において、また国家一般が公海において行使できる権限は国際法により定まる。
【領海】領海では、外国船舶による無害でない通航を防止するため、沿岸国は拿捕を含む必要な措置をとることができる。領海上での必要な措置には沿岸国に大幅な裁量権が認められると解されている。領海や接続水域等で外国船舶が沿岸国の法令に違反した場合、沿岸国は追跡権を行使して拿捕することができる。なお、外国軍艦の無害通航権については立場が分かれている。
【排他的経済水域】排他的経済水域では、沿岸国は「主権的権利を行使するに当たり、この条約に従って制定する法令の遵守を確保するために必要な措置」をとることができる。領海とは異なり、その目的は「法令の遵守確保」に絞られ、領海よりも取り得る措置は限定されると解釈されている。
【公海】公海上では、原則として旗国だけが自国の船舶に対して排他的管轄権を行使できる。これには追跡権や臨検権など若干の例外があり、さらに海賊船舶に対して、すべての国は軍艦等によって公海等のいずれの国の管轄権にも服さない場所で拿捕することができるとされている。しかし、領海や排他的経済水域と比べると各国の公海上での権限は極めて厳格に限定されている。
北海道の北方領土近海の海域では、この拿捕が問題となっている。勿論国際法上に乗っ取ってロシア側が日本人漁師を拿捕しているのだが、拿捕されたまま、現地で死亡してしまう例もあるようで、死亡原因が明確になっていないようだ。漁師にとって、まさに命がけの漁になっているのだ。日本の外務省のホームページには、この件についての詳細がアップされている。