ホリショウのあれこれ文筆庫

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第595話 番外地

序文・地番のついていない土地

                               堀口尚次

 

 番外地とは日本の住所の表記のひとつであり、土地公簿で地番のついていない土地を指す。無番地無地番地とも呼ばれる。住所を表すのに、市区町村が定めた「何丁目何番何号」という「住居表示」が施行されている地域もある。一方、未実施区域では「地番」を元に住所が定められる。「番地」とは、法務局が登記された土地に付した番号である。また、その土地の上に建つ建物は、たとえば地番「1」枝番「1」の土地の上であればその建物の所在は「1番地1」となる。個人の住所を表すにも、その者が住んでいる建物の「所在」を使う。

 ただし、不動産登記〈表題登記や所有権保存登記〉のされていない土地、つまり民法239条2項の規定により国庫に属することとなる国有地には、必ずしも地番が付くとは限らない。そして、もともと国有地だった土地、例えば分割民営化後のJRの鉄道敷地などにも地番が振られていない事例がある。さらに、埋立地のようにまだ土地として認定されていないような場合や、東京高速道路の敷地のように地方自治体間で境界に争いがある場合にも地番が振られないことがある。

 明治時代の地租改正において官有地と私有地を区分した際、その区分から漏れてしまった土地を「脱落地」と称する。脱落地には通常地番が付されておらず、土地登記簿にも登載されない。

 このような番地のない土地の住所を表現する場合、町名が振られている場合はその後に「〈官有 / 国有〉無番地」を続ける、近くに設定されている地番に「地先」を付ける、国有林であれば住所の代わりに林班を使って場所を示すなどの方法がある。なお、住居表示実施区域では建物の並び順に市区町村が番号を振り当てるので国有地上の建物でも「番外」となるようなことはない。

 網走刑務所の「番外地」という呼び名も本来の所在地が「網走市字三眺(さんちょう)官有無番地」であったものが「刑務所=娑婆と切り離された別世界」というイメージで、そこに手紙を出す受刑者の家族などによって作られたものと考えられる。『網走番外地』は、伊藤一の小説。作者が網走刑務所で服役した経験をもとにして書かれ、1956年に出版された。1959年には日活で映画化され、1965年からは東映高倉健主演による映画シリーズ化がなされ、18作が制作された。