ホリショウのあれこれ文筆庫

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第635話 活火山の山号「恐山」

序文・日本三大霊場

                               堀口尚次

 

 恐山は、下北半島青森県〉の中央部に位置する活火山である。カルデラ湖であるの宇曽利山湖(うそりさんこ)の湖畔には、日本三大霊場の一つである恐山菩提寺が存在する。霊場内に温泉が湧き、共同浴場としても利用されている。恐山を中心にした地域は下北半島国定公園に指定されている。

 恐山は、カルデラ湖である宇曽利山湖を囲む外輪山と、円錐形の火山との総称である。最高峰は標高878mの釜臥山。外輪山は釜臥山、大尽山、小尽山、北国山、屏風山剣の山、地蔵山、鶏頭山の八峰。「恐山」という名称の単独峰はない

 古くは宇曽利山と呼ばれたが、転化して恐山「おそれやま/おそれざん」と呼ばれるようになった。「うそり」とはアイヌ語の「ウショロ〈くぼみ〉」に由来する。

 宇曽利山湖の湖畔にある恐山菩提寺は日本三大霊場の一つであり、9世紀頃に天台宗の慈覚大師円仁が開祖した。本尊は延命地蔵尊。同寺は現在は曹洞宗の寺院であり、本坊はむつ市田名部にある円通寺である。恐山は死者の集まる山とされ、7月の恐山大祭では、恐山菩提寺の境内でイタコの口寄せも行われる

 恐山は、地蔵信仰を背景にした死者への供養の場として知られ、古くから崇敬を集めてきた。下北地方では「人は死ねば〈魂は〉お山〈恐山〉さ行ぐ」と言い伝えられている。山中の奇観を仏僧が死後の世界に擬したことにより参拝者が多くなり信仰の場として知られるようになった。明治・大正期には「恐山に行けば死者に会える」「河原に石を積み上げ供物をし声を上げて泣くと先祖の声を聞くことができる」「恐山の三大不思議〈夕刻に河原に小石を積み上げても翌朝には必ず崩れている、深夜地蔵尊の錫杖の音がする、夜中に雨が降ると堂内の地蔵尊の衣も濡れている〉」などが俗信された。

 恐山大祭や恐山秋詣りには、イタコマチ〈イタコがテントを張って軒を連ねている場所〉に多くの人が並び、イタコ口寄せが行われる。なお恐山で口寄せが行われたのは戦後になってからであり、恐山にイタコは常住していない。また恐山菩提寺はイタコについて全く関与していない。イタコは、八戸や、青森から恐山の開山期間中にのみ出張してきており、むつ市には定住していない。