ホリショウのあれこれ文筆庫

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第664話 トイレの神様・烏枢沙摩明王

序文・不浄を浄化する

                               堀口尚次

 

 烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)は、密教における明王の一尊である。「烏枢瑟摩」「烏蒭沙摩」「烏瑟娑摩」「烏枢沙摩」とも表記される。真言宗天台宗禅宗日蓮宗などの諸宗派で信仰される。台密天台宗密教〉では五大明王の一尊である。日蓮宗では「烏蒭沙摩明王」の表記を用い、火神・厠(かわや)の神として信仰される。

 烏枢沙摩明王は古代インド神話において元の名を「ウッチュシュマ」、或いは「アグニ」と呼ばれた炎の神であり、「この世の一切の汚れを焼き尽くす」功徳を持ち、仏教に包括された後も「烈火で不浄を清浄と化す」神力を持つことから、心の浄化はもとより日々の生活のあらゆる現実的な不浄を清める功徳があるとする、幅広い解釈によってあらゆる層の人々に信仰されてきた火の仏である。意訳から「不浄潔金剛」や「火頭金剛」とも呼ばれた。

 烈火をもって不浄を浄化する明王として知られ、寺院の便所に祀られることが多い。また、この明王は胎内にいる女児を男児に変化させる力を持っていると言われ、男児を求めた平安時代の公家に広く信仰されてきた。静岡県伊豆市妙徳寺などでは、烏枢沙摩明王が下半身の病に霊験あらたかであるとの信仰がある。

 『穢跡金剛霊要門』では、釈尊が涅槃に入ろうとした時、諸大衆諸天鬼神が集まり悲嘆している中、蠡髻(れいけい)梵王〈梵天〉のみが天女との遊びにふけっていた。そこで大衆が神仙を使って彼を呼んだが、慢心を起こした蠡髻梵王は汚物で城壁を作っていたので近づくことが出来なかった。そこで釈尊は神力を使って不壊金剛を出現させた。金剛は汚物をたちまちに大地と変えて蠡髻梵王を引き連れてきた。そこで大衆は大力士と讃えた。

 烏枢沙摩明王は彫像や絵巻などに残る姿が一面六臂であったり三面八臂であるなど、他の明王に比べて表現にばらつきがあるが、主に右足を大きく上げて片足で立った姿であることが多い〈または蓮華の台に半跏趺坐で座る姿も有名〉。髪は火炎の勢いによって大きく逆立ち、憤怒相で全ての不浄を焼き尽くす功徳を表している。また複数ある手には輪宝や弓矢などをそれぞれ把持した姿で表現されることが多い。

 タイトルを「トイレの神様」としたが、正しくは「トイレの仏様」である。