ホリショウのあれこれ文筆庫

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第670話 野生にいないジュウシマツ

序文・籠の鳥

                               堀口尚次

 

 ジュウシマツ〈十姉妹〉とは、スズメ目カエデチョウ科の鳥。愛玩用にヒトの手によって作り出された家禽(かきん)で、野生種は存在しない

 体長約12cm、体重12〜18g。寿命は3年程度、長くても8年などと言われてきたがこれはかつての繁殖のための鳥であったころの飼い方の話で、インコ・ブンチョウのように適切な温度管理やペレットの使用で丁寧に飼えば当然長生きする。13年以上生きているものもいるという。

 インコ類や文鳥(ぶんちょう)と異なり、家禽としての歴史が長いため飛翔力が弱く、かご抜けしても野生では長く生きることができないとされる。

尾は長めで、嘴(くちばし)は太く、真っすぐである。嘴、羽毛、足の色は多様で、親子で遺伝するが、遺伝しない場合もある。

 コシジロキンパラの一亜種であるチュウゴクコシジロキンパラ が、ジュウシマツの原種と考えられている。江戸時代に中国から日本に輸入されたものが、品種改良されて生み出されたとされている。

 ジュウシマツは同じカエデチョウ科のキンパラ属に含まれる種のうちコシジロキンパラ、キンパラ、ギンパラ、ヘキチョウなどとはかなりの近縁にあたり、これらの野鳥とは交配によって繁殖力のある子孫を残すことが可能である。それを利用し、ヨーロッパでは日本とは異なる系統のジュウシマツの品種が産出されている。

 多頭飼いしても喧嘩せず仲良くしていることから『十姉妹』という漢字を当てられる様に、ジュウシマツは他の鳥に比べて性格がおとなしく温和な性格のため、人にもよく慣れ、飼育は非常に簡単である。初心者向けの飼い鳥である。よって巣引(すび)き〈繁殖〉も容易である。「ヘルパー」として一人餌(ひとりえ)ができるようになった仔(こ)が、給餌(きゅうじ)などで親の子育てを助ける〈自身の弟妹などの世話〉ことがある。

 因みに「文鳥」は野生種もいるが、「手乗り文鳥」として飼育されるものも多い。愛知県弥富市が「文鳥のまち」として知られている。明治時代には当時の海西郡彌富村で真っ白な白文鳥が生まれ、日本全国に広がった。

※ジュウシマツ             ※文鳥