ホリショウのあれこれ文筆庫

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第673話 海の安全を守る青峰山観音

序文・十一面観音菩薩

                               堀口尚次

 

 正福寺(しょうふくじ)は、三重県鳥羽市松尾町にある、高野山真言宗の仏教寺院。山号青峯山(あおみねさん)で、同名の山の頂上付近にある。別名は嵯峨御所。海上守護の霊峰として漁業関係者の篤い信仰を集め、信者は北海道小平町から鹿児島県鹿児島市まで日本中に分布する。鳥羽市志摩市の境界を成す青峰山の山頂〈天跡(てんせき)山〉よりやや下った谷あいに位置し、「青峰さんの名で親しまれている。曹洞宗の寺院が多い鳥羽志摩では珍しい真言宗の寺院である。

 十一面観音を本尊とする。御船祭の際に開帳となる。この観音は相差(おうさつ)村〈現在の鳥羽市相差町〉白浜の海からクジラの背に乗って現れた黄金仏である、という伝説がある。この時、クジラがやってきた場所の岬が「鯨崎」となり、観音を乗せたクジラが石化したとされる「鯨石」もある。その後、婆羅門僧正が来訪し観音像を拝むと像が光り、腰蓑(こしみの)の漁夫の姿になったという。僧正は篤い崇敬の念を抱き、木仏を掘って中に観音像を納めた。

信仰者は地元の三重県をはじめとして愛知県や静岡県を中心に日本中に広がっている。

 青峰山が海からの見通しが良く、航行目標・距離の捕捉に役立つことから漁業関係者や船員の信仰を集めている。昭和63年現在、本堂と聖天堂を結ぶ回廊には、奉納された絵馬105点、護摩札36点が掲げられている。多くは「海難絵馬」というもので、遭難を免れた漁民が納めたものである。現在では、絵馬の代わりに進水式の時の船を撮った写真を奉納することが一般的となり、漁船に乗る人だけでなく、ヨットやボートに乗る人の奉納も増加しているという。信仰の形態としては、正福寺への参詣はもちろん、同寺の名が入った紺地の旗を船に掲げ、お札を船に付ける、という行為が見られる。また、相差の海女はお札を首から提げている。

 愛知県名古屋市南区では、海上安全・水難防止を願う「青峯山観音菩薩」が各地に祀られている。本来は船の出入りする入り江や新田の堤防上に祀られていたが、多くは寺社の境内に移されている。

 筆者の地元・愛知県東海市名古屋市南区に隣接しており、青峰山観音菩薩を祀ってあるところが数カ所ある。