ホリショウのあれこれ文筆庫

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第705話 言葉を紡ぐ

序文・言霊

                               堀口尚次

 

 5月23日の中日新聞の「中日春秋」に読めない漢字があった。「紡ぐ」だ。早速ネットで検索し「つむぐ」であることがわかったが、いい言葉だ。自分の無智と蒙昧(もうまい)を恥じ入るばかりだが、隠したってしょうがない。学識がないことは明白で、勉学に勤(いそし)しまなかった報いだ。

 投稿では、世間を騒がしているジャニーズ事務所の問題について、俳優の東山紀之氏の言動を取り上げていた。彼が自伝の書籍で綴った「自分をありのままにさらけだしても生きていける人間になりたい」を引用し、『勇気をだして明らかにした後輩に寄り添う先の言葉は、心の底から紡いだのだろう』と締めくくっている。

 「紡ぐ」とは、『綿や繭(まゆ)を錘(つむ)〈繊維をねじって撚(よ)りあわせ、糸にする道具〉にかけて繊維を引き出し、縒(よ)りをかけて糸にする。』とあり、そこから比喩的に言葉をつなげて文章を作る。多く、物語や詩歌などを作ることをいう。

 芸能界や興行〈プロレスや芝居なども含む〉には、昔から闇の部分や裏社会との繋がりが指摘されてきた歴史があることは承知の事実だ。勿論、八百長を肯定するものではないが、「創られた世界」を楽しむということは、そうしたグレーな部分を凌駕した上で、楽しむ姿勢が必要なのだと思う。

 人間は、十人十色であり、それぞれがそれぞれの過去をしょって生きているのだから、その過去を問いても仕方あるまい。問題は、現在を胸を張って生きているかということであり、たとえ今が不遇で、とても前を向いて歩めない状況であったとしても、いつの日にか「自分をありのままにされけだしても生きていける人間になりたい」と思える自分でありたいものだ。

 記事にある『心の底から紡いだのだろう』に感銘した。記者はまさしく言葉を紡ぐ生業であり、多くの経験や様々な葛藤などから言葉を紡いでいるのだろうことが容易に想像できる。事実を忠実に伝え、報道する使命に加えて、事実に対する感想や意見を自分の言葉で紡ぐという、高度な知識と見識が必要とされる立場だ。社会正義を代弁する立場と言っても過言ではなかろう。

 今回の記事では「言葉」というものが持つ魔力みたいなものを感じることができた。「座右の銘」や「辞世の句」などにも言葉の魅力を見ることが容易だ。

やはり日本語には「言霊(ことだま)」があるということを信じて止まない。