ホリショウのあれこれ文筆庫

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第706話 特別養子縁組の課題

序文・出自を知る権利

                               堀口尚次

 

 EテレのETV特集で「自分を知りたい 特別養子縁組と“出自(しゅつじ)を知る権利”」を観た。大変奥深い内容であり、法律から抜け落ちた問題点がクローズアップされていた。これを機に、調べてみた。

 特別養子縁組とは、児童福祉のための養子縁組の制度で、様々な事情で育てられない子供が家庭で養育を受けられるようにすることを目的に設けられた。民法の第四編第三章第二節第五款、第817条の2から第817条の11に規定されている。普通養子縁組の場合、戸籍上、養子は実親と養親(ようしん)の2組の親を持つことになるが、特別養子縁組は養親と養子の親子関係を重視するため、養子は戸籍上、養親の子となり実親らとの親族関係がなくなり、事実上養親の実子となる

 ただし、近親婚を禁止する規定は例外的に実親の親族との間でも適用される。特別養子縁組の条件として子供が養子縁組できるのは、子どもの年齢が15歳になるまでと制限されている〈ただし15歳未満から養親候補から事実上養育されており、やむを得ない事由で15歳までに申し立てが出来ない場合は15歳以上でも可能〉。特別養子縁組の離縁は、「養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること」「実親が相当の監護をすることができること〈実父母の双方がすでに死亡している場合は対象外〉」「養子の利益のために特に必要があると認めるとき」と家庭裁判所が認めた場合のみ可能であり、その場合は離縁の日から、実親らとの親族関係が復活する。

 なお、里親制度と養子縁組が混合されがちであるが、里親委託は里親が〈実親の生活が安定するまでなどの〉一時的に子どもを養育する制度であり、里親と子どもの戸籍上の繋がりは発生しない点が養子縁組とは異なっている。

 番組が取り上げていた課題は、特別養子縁組で養子となった子が、成人〈もしくはものごころがつく頃〉して、自出を知る権利が芽生えた時に、戸籍上の赤の他人となった生みの親とのコンタクトが取れないという問題に苦悩する養子の方が存在することだ。行政側には、個人情報保護の壁が立ちはだかるのだ。

法律が制定された背景も丁寧に解説されていおり、生みの親の情報〈出自を知る権利〉は、地方自治体にまかされるという法律の建付けになっているようだ。

 何にしろ、当事者である人々が救われんことを願って止まない。