ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1057話 鞍馬天狗

序文・牛若丸に剣術を教えた

                               堀口尚次

 

 鞍馬天狗は、鞍馬山の奥、僧正ヶ谷に住むと伝えられる大天狗である。別名、鞍馬山僧正坊。

 大天狗は、強力な神通力を持つとされる天狗である。さまざまな説があるが善悪の両面を持つ妖怪もしくは神とされ、優れた力を持った仏僧、修験者などが死後大天狗になるといわれる。そのため他の天狗に比べ強大な力を持つという。

 牛若丸のちの源義経剣術を教えたという伝説で知られる。鬼一方眼と同一視されることがある。

 鬼一法眼は、室町時代初期に書かれた『義経記』巻2に登場する伝説上の人物。「法眼」とは僧侶に対する尊称であって、名前ではない。

 京の一乗堀川に住んだ僧侶の身なりの法師陰陽師。『六韜(りくとう)』という兵法の大家でもあり、文武の達人とされる。源義経がその娘と通じて伝家の兵書『六韜』を盗み学んだという伝説で有名。また剣術においても、京八流の祖として、また剣術の神として崇められている。浄瑠璃「鬼一法眼」でも広く知られた。

 京都市立鞍馬小学校横には、「鬼一法眼之古跡」という石碑があり、鬼一法眼の屋敷跡とも墓とも伝えられている。なお、石碑の建立は大正4年11月10日、鞍馬校職員生徒によるもの。また、鞍馬寺境内には鬼一法眼を祀る鬼一法眼社がある。

 鞍馬弘教(こうきょう)では、鞍馬寺に祀られる尊天の一尊である大天狗、護法魔王尊、またの名を鞍馬山魔王大僧正が、鞍馬山僧正坊を配下に置くとする。または、鞍馬山僧正坊と同一視する。この教義が現在の形となったのは、鞍馬弘教天台宗から独立した昭和24年以降である。

 「鞍馬天狗」は、能の演目の一つ。五番目物、天狗物、太鼓物に分類される。牛若丸伝承に題を採った曲で、大天狗と牛若丸との間の少年愛的な仄(ほの)かな愛情を、華やかな前場と、山中での兵法相伝を行う後場の対比の中に描く。