ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1109話 イオマンテ

序文・アイヌ儀礼

                               堀口尚次

 

 イオマンテとはアイヌ儀礼のひとつで、ヒグマなどの動物を殺してその魂であるカムイを神々の世界 に送り帰す祭りのことである。

 イオマンテの語は、イ〈i、'それを'〉+オマンテ〈返す〉からなり、すなわち'それを送る'という意味であるが、「それ」とは恐れ多いカムイの名を直接呼ぶ事を避けた婉曲表現であり、従ってイオマンテとは「カムイを行かせる」儀式の意である。また、語頭のiとoの間に渡り音のyが挿入されてiyomante=イヨマンテという発音になることも多い。

 近代においては単にイオマンテという場合、熊〈ヒグマ〉のイオマンテが主体とされる。

 飼育したヒグマを対象とする儀式はイオマンテ、狩猟によって捕殺した野生のヒグマ〈キムンカムイ、'山の神'〉を対象とする儀式はカムイ・ホプニレ と呼んで区別する地域もある。「ホプニレ」とはho「尻」+puni「何々を持ち上げる」+re「使役動詞語尾」で「〈カムイを〉発たせる」の意味。狩猟で殺した直後の獣のカムイは、魂  の形で両耳の間に留まっているという。そこでカムイ・ホプニレの儀式では祭壇を設えてヒグマの頭部を祀り、酒食やイナウを捧げてそのカムイに神々の世界に帰ってもらう。

 本来は、カムイであればどんな〈狩猟動物の〉カムイでも構わなかったと推考されている。かつてアイヌが本州に居住していた頃に熊送りがおこなわれていたならば、対象はツキノワグマであったことは言うまでもない。熊以外の具体例では、シマフクロウ〈コタンコロカムイ、'集落の守り神'〉のイオマンテを一部の地域では重視されているが、梟送りは、カムイ・ホプニレとも呼称される。またシャチ〈レプンカムイ、'沖の神'〉を対象とするイオマンテもある。

 劇団WAHAHA本舗に所属する梅垣義明が、この楽曲を伴奏として、全身に金粉を塗った扮装をしてコテカ〈ペニスケース〉を軸棒に見立てて皿回しをしながら踊る芸を持ちネタにしていた時期がある。当初は劇場やローカルテレビ局の深夜放送のみで披露していた芸であったが、1994年元旦に日本テレビ系全国ネットで放送され、後日アイヌ民族の団体北海道タウリ協会等が「誤解を招く上に差別的である」として日本テレビ本社と北海道内の日本テレビ系列局である札幌テレビ放送に抗議を行った。この抗議を受け、梅垣はこの芸を封印した。