序文・クラゲやイソギンチャクの仲間
堀口尚次
サンゴ〈珊瑚〉は、刺胞(しほう)動物門〈イソギンチャクやクラゲなど〉に属する動物のうち、固い骨格を発達させるものである。宝石になるものや、サンゴ礁を形成するものなどがある。
サンゴは、ポリプと呼ばれる構造をもつ。このポリプが単体で生活するものを「単体サンゴ」、有性生殖によって生じた一つのポリプが分裂や出芽を繰り返して生じたクローンが、分離することなく集まって生活するものを「群体サンゴ」と呼ぶ。
サンゴの中には体内に褐虫藻(かっちゅうそう)という藻類を共生させているものがいる。そのようなものは造礁(ぞうしょう)性サンゴと呼ばれる。造礁性サンゴは褐虫藻から光合成産物を供給されるため比較的成長が早く、サンゴ礁を形成する。造礁性サンゴは光合成により多くのエネルギーを得ているため、光量の多い浅海域に生息する。
褐虫藻と共生を行わないものは非造礁性サンゴと呼ばれる。光合成によるエネルギーに依存しないため、非造礁性サンゴには深海に生息するものもいる。
サンゴはカンブリア紀〈約5億4200万年前〉に出現したが、この時代のサンゴ化石は非常に稀である。オルドビス紀になると床板サンゴや四射サンゴが出現し、分布を広げた。古生代の時点で、既に藻類と共生するものがいたようだ。床板サンゴはシルル紀中期から衰退を始め、ペルム紀末に絶滅した。四射サンゴはシルル紀中期まで繁栄し、三畳紀初頭に絶滅した。六射サンゴはオルドビス紀から存在が確認されており、四射サンゴや床板サンゴの絶滅後、そのニッチを埋める形で繁栄した。
床板サンゴや四射サンゴの骨格はカルサイトで構成されている。これに対し、六射サンゴの骨格はアラゴナイトで構成されている。それ故、六射サンゴの方が新しい時代に生きていたにもかかわらず、化石記録は床板サンゴや四射サンゴの方が豊富である。
サンゴ礁〈サンゴしょう、珊瑚礁、さんご礁、coral reef〉は、造礁サンゴの群落によって作られた地形の一つ。サンゴがその石灰質の骨格を積み重ねて海面近くまで高まりを作る地形のことをいう。熱帯の外洋に面した海岸によく発達する。