序文・廃線跡地利用
堀口尚次
神岡鉄道株式会社は、かつて岐阜県飛騨市に本社を置いていた、第三セクター方式の鉄道会社である。旧日本国有鉄道の特定地域交通線であった神岡線を引き継ぎ運営していた。鉄道事業以外に自動車整備業なども手掛けていたほか、2006年3月までは旅行業なども行っていた。神岡線は、富山県富山市の猪谷駅から岐阜県飛騨市の奥飛騨温泉口駅に至る神岡鉄道が運営していた鉄道路線である。平成18年12月1日に全線が廃止された。
本来、神岡鉱山から産出される亜鉛鉱石の輸送が目的の鉄道であり、改正鉄道敷地法別表にも制定時から「富山県猪谷ヨリ岐阜県船津ニ至ル鉄道」として掲げられている。鉱山へは、大正11年に軌間762 mm〈後に610 mm〉の神岡軌道〈専用鉄道、後に地方鉄道〉が高原川を挟んだ対岸から通じていたが、本路線の開業とともに昭和42年に廃止されている。高原川沿いの急峻な山間を走るため、全線の64%がトンネルまたは橋梁という山岳路線で路線環境も良く、「奥飛騨の地下鉄」とも呼ばれていた。
令和3年時点で、廃線となった軌道は一部区間が観光用に保存されており、軌道用自転車で巡ることができるほか、鉄道車両1両が動態保存されており、運転体験を楽しむことができる。廃線の線路上で軌道自転車を運行する「レールマウンテンバイク」の運行を考案。平成19年から飛騨市観光協会に飛騨市も協力する形で廃線跡のうち、2.9kmで実験運行を開始した。
軌道のみならず、鉄道車両についても観光用の活用に向けて整備が進められ、令和2年10月、廃線および構想から14年の歳月を経てついに動態保存による観光鉄道が実現した。旧奥飛騨温泉口駅 - 旧神岡大橋駅間では、普通自動車運転免許証を持っていれば、 公式サイトから予約を行うことで、実際の神岡鉄道の運転士の指導を受けながら、車両の運転体験を行うことができる。
【HPより抜粋】 NPO法人神岡・町づくりネットワークが運営をしております、レールマウンテンバイク「Gattan Go!!」は、全国の廃線問題を抱えておられる自治体・各団体の皆さまのご視察をお受けしております。惜しまれつつも廃線にせざるを得ない鉄道の風景を「心の財産」として後世に残し、利活用をご検討の皆様、私どもの試行錯誤・悪戦苦闘・丁々発止の日々を共有することが出来ましたら幸いです。