序文・ニューヨーク・ヤンキース
堀口尚次
ヤンキー〈英語: Yankee〉 は、アメリカ合衆国北東部に住む白人に対する俗称である。アメリカ国外においては南部を含むアメリカ人全体に対する俗称、または蔑称。南北戦争当時のアメリカ南部で、北軍兵士や北部諸州の人間を軽蔑した呼び方が「yankee」であり、「ヤンキー」の語源とも言われているオランダ人の「Jan〈ヤン〉」という人名はキリスト教文化圏に広く浸透している「ヨハネ」から来ている。
日本では、ヤンキーという語そのものは明治大正の時代から日本で使用されており、1904年発行の『最新正確布哇渡航案内』では、国際都市としてのハワイ〈布哇〉の一面を紹介するくだりで黒人やプエルトリコ人、支那人や日本人、朝鮮人とならび「ヤンキーの子供」を小ばかにした表現で紹介している。
また「映画界」〈1923年〉ではルドルフ・バレンチノ主演の『血と砂』について「ヤンキー式な亜米利加人の好奇心〈ばかりで〉日本人には何んだか見てゐてちつとも深みと味いのない映画」との評論を掲載している。果ては、第二次世界大戦中は戦意高揚を目的とした政府系広報で「洋鬼」という漢字に「ヤンキー」とフリガナを振った記述が残る。
「ヤンキー」と呼称されるスタイルは、若者の「周囲を威嚇するような強そうな格好をして、仲間から一目おかれたい」という志向が表れたものである。それぞれの時代によって流行があり、明治以来の伝統的なモラトリアムファッションである「バンカラ」から、1970年代に流行した「ツッパリ」スタイル以降、「〈クラシック〉ヤンキー」「ヒップホップヤンキー」「ギャル男」「悪羅悪羅(おらおら)系(けい)」など時代に応じて流行に変化が見られる。根本的なメンタリティ自体はそれほど変化していないが、外見や消費傾向などの枝葉の部分は時代に連れて変化を続けている。
発生当初は管理教育などへの反抗を掲げ校内暴力などの問題を起こしていたが、近年では「周りの目よりも仲間と過ごす楽しいひと時を大切にし、そのためなら反抗も厭わない」という性質に特化している。
口伝えで広まった言葉のため、語源とは関係なく曖昧な定義のまま使用されることが多く、「非行少年」「不良」「チンピラ」「不良集団」などを指すものとして広範な意味で使用されている。