序文・ドレミファソラシド
堀口尚次
平均律は、オクターヴを均等に分割した音律。西洋音楽で用いられる十二平均律がよく知られているが、その他にも多種類が考案されている。
十二平均律とは、1オクターヴを12等分した音律である。隣り合う音〈半音〉の周波数比は等しく212:1〈100セント〉となる。
1オクターヴを12等分するという方法による十二平均律では、1度〈ユニゾン〉と8度〈オクターヴ〉を除いて簡単な整数比率による純正な音程は得られない。その代わりピタゴラス音律や中全音律で生じる著しく誤差の大きな音程〈ウルフ〉によって妨げられること無く、全ての調で演奏が可能で、転調や移調が自由に行える。十二平均律では半音の大きさは均一であり、異名同音は実際に同じ音となる。十二平均律はピタゴラス音律を調整してピタゴラスコンマを全ての完全5度に均等に拡散した音律であると考えることもできる。その結果、十二平均律の完全5度は純正音程から1/12ピタゴラスコンマ分狭くなっているものの、その差は比較的少ない。一方で長短の3度は、ピタゴラス音律よりは純正音程に近いが、依然として差が大きい。
平均律はギターなどのフレット式弦楽器との親和性が高い。楽器の調律において、純正な音程は2つの音を同時に出し倍音のうなりが消えるようにすることで調律できるが、平均律ではユニゾンとオクターヴ以外に純正な音程が存在しないため、鍵盤楽器などの調律は容易ではない。一方、フレット式楽器やモノコードなどでは、幾何(きか)的(てき)に弦の分割点を設定することで平均律を実現できる。また、フレット式楽器では、平均律以外の半音の音程が一定でない音律では、各弦に対するフレット間隔が揃わず、直線のフレットを用いるには不都合である。
日本では和算家の中根元圭が『律原発揮』〈元禄5年〉において、1オクターヴを12乗根に開き平均律を作る方法を発表した。