序文・移籍活性化
堀口尚次
そもそもプロ野球のドラフト会議は、日本野球機構が開催する、新人選手獲得のために行われる会議である。正式名称は新人選手選択会議。
現役ドラフトは、日本野球機構で導入されている現役選手の移籍制度である。2022年より開始し、以降毎年12月に行なわれている。
日本プロ野球選手会が、メジャーリーグベースボールが導入している『ルール・ファイブ・ドラフト』を参考に、出場機会が少ない中堅選手の移籍活性化を狙いとし、導入を希望していたもの。2018年7月に選手会の臨時大会においてその議論が交わされ、2018年8月から選手会とNPBの選手関係委員会との間で事務折衝を続けた。2020年1月22日に、NPBと選手会の間で現役ドラフトについての事務折衝が行われ、プロ野球実行委員会によって取りまとめた制度案が提示された。各球団が指名したい選手1名に投票〈予備指名〉を行い、最も多くの票を獲得した球団が1番目の指名権を獲得する。最多得票の球団が複数となった場合、同年のドラフト会議におけるウエーバー順〈最下位球団から順に〉で指名権を決定する。指名権を獲得した球団が予備指名を行った選手を指名し、指名権は選手を指名された球団に移行する。
しかし、第1回を経た2023年オフ以降、「『出場機会に恵まれない選手の移籍活性化』を意図しながら、移籍しても出場機会が与えられず短期間で戦力外となる可能性がある」点が議論となっている。2022年の第1回を例にとっても、細川成也や大竹耕太郎のように前所属球団と比較して出場機会・成績共に大幅に伸ばす事例があった一方で、同年に指名された12人中6人が移籍後1年で戦力外通告を受けた〈このうち2名は育成選手として再契約〉。
野球評論家の野口寿浩は、「何人か戦力外になってしまいましたが、現役ドラフトで移らなくても、同じことになっていたと思います」とした上で、「移籍して自分の立場を掴めなかったのは、現役ドラフトだろうが、なんだろうが変わらない。12球団で(成功した選手が)いただけでも意義はあるんじゃないでしょうか」と制度の有効性を語った。一方、スポーツジャーナリストの西尾典文は「出場機会が少ない中堅選手の移籍活性化と飼い殺しを防ぐという狙いから考えると、改善の余地がある」とした上で、2022年開始直後のルールでは対象となる選手が少なすぎると批判している。