ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1275話 秘密国家警察・ゲシュタポ

序文・暴力装置

                               堀口尚次

 

 ゲハイメ・シュターツポリツァイ〈通称ゲシュタポ〉は、ナチス・ドイツ期のプロイセン自由州警察、あるいはその後、ドイツ警察の中にあった秘密警察部門。「ゲハイメ・シュターツポリツァイ」は、秘密国家警察を意味するドイツ語。 1933年にプロイセン自由州の秘密警察・プロイセン秘密警察として同州内相ヘルマン・ゲーリングが発足させた。1934年に親衛隊〈SS〉のハインリヒ・ヒムラーとラインハルト・ハイドリヒが指揮権を握り、1936年に活動範囲を全ドイツに拡大させた。同年に保安警察の一部局、さらに1939年には国家保安本部の第IV局に改組された。

 第二次世界大戦中にはドイツ国防軍が占領したヨーロッパの広範な地域に活動範囲を広げ、ヨーロッパ中の人々から畏怖された。その任務はドイツおよびドイツが併合・占領したヨーロッパ諸国における反ナチ派レジスタンススパイなどの摘発、ユダヤ狩りおよび移送などである。

 示せばいつでも・どこへでも・令状なしの立ち入りが出来る、専用身分証明書と、表面にライヒアドラー、裏面に「Geheime Staatspolizei」の文字が浮き彫りにされ個人番号が打たれた楕円形の認識票を交付されたゲシュタポ要員は、ドイツ国内や占領地域において、ナチス・ドイツ暴力装置として機能し、普通の人たちにまぎれて「夜と霧」と呼ばれる深夜から夜明けにかけての予期せぬ突然の逮捕、厳しい訊問や残酷な拷問、劣悪な待遇や拘禁などで知られ、ヨーロッパ中を震え上がらせた。これは、人材の配分が武装親衛隊国防軍、警察の順になっており、ゲシュタポに社会的不適格者が配属されることが多かったのも原因と言われている。ゲシュタポ要員は、その身なりも黒い外套や手袋、黒眼鏡などを用いて人々に不吉な印象を与え、恐怖心を煽るためにやや芝居がかった茶番劇のような手法をとった。さらに粗暴、野蛮さ、気まぐれな振る舞い、怠け癖、皮肉な態度や、時には欺瞞的な温容ささえ示して思いのままに被疑者を調べ上げる権限を行使した。そのような彼らに対して、ドイツ国民は諦めの気持ちで従順に従った。個人で抵抗するにはあまりにも危険な組織であった。また、国外に逃亡したとしても、ゲシュタポの目からは逃れられなかった。ゲシュタポ構成員は、世界各国のドイツ大使館に派遣され、海外に亡命した反ナチスのドイツ人やユダヤ人の監視・摘発の任務に当たっていた。