序文・DQN
堀口尚次
キラキラネームあるいはDQNネーム〈ドキュンネーム〉は、伝統的でない当て字、外国人名、創作物の登場人物名などを用いた奇抜な名前の総称。1990年代半ば以降から増加し、2000年代前半〜2010年代前半に全盛期を迎えた。命名は親の責任であるためにその者の親の自己満足・教養の無さが露呈する名付けと言われ、2000年代にはインターネットスラングとしてDQNネームと呼れてきたが、2010年代以降にマスメディアでは批判的な意味を薄めた「キラキラネーム」が新たに造語され、以降のマスメディアではほぼ統一利用されている。対義語として、古風で昔ながらの名前は「しわしわネーム」とも呼ばれる。
そもそも、民法には命名行為について規定がなく、命名に際しては、漢字は常用漢字表〈2136字〉と人名用漢字表〈863字〉の合計2999字であれば、自由に組み合わせて使える。出生届に「よみかた」があるが、これは住民基本台帳事務の処理上の利便のために設けられているものにすぎず、戸籍の名の欄には漢字の読み方が記載されない。このため、難解な読み方や、キラキラネームを付けることができる。また人名では音訓の他に特殊な訓読をする人名訓〈名乗り訓〉の文化があり、行政手続に支障を来していた。これについて、法務省は、戸籍に「読み仮名」を記載するかどうかの検討を、法制審議会に諮問した。これはマイナンバー制度の導入などで「読み仮名が付されていない事が行政手続きなどのデジタル化の妨げになっている」との指摘も改正の背景にある。
2023年2月に戸籍法改正の要綱案が答申され、読みがなを片仮名で表記するとしていて「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」との規定を設けたうえで、法務省は「行きすぎた『キラキラネーム』など、社会に混乱を招く極端なものは記載されない。そのうえで、辞書に載っている読み方だけではなく、載っていなくても、社会に一定程度受け入れられる読み方であれば認められる方向」としている。改正戸籍法は同年6月に成立し、2025年5月26日に施行される〈予定〉。これにより改正法の施行後は「戸籍の記載事項として、氏名の振り仮名を追加し、氏名の振り仮名の読み方は、氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない〈戸籍に届け出た振り仮名の変更についても「名の変更」と同様に家庭裁判所の許可がが必要となる〉」こととなった。