ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1283話 おとり捜査と仮装身分捜査

序文・身分秘匿

                               堀口尚次

 

 おとり捜査〈囮捜査〉とは、捜査機関が対象者に犯罪の実行を働きかけ、犯罪が実行されるのを待って対象者を検挙する捜査手法

 令状による通常逮捕など他の捜査手法によっては検挙するのが難しい犯罪〈薬物犯罪、買春など〉について、おとり捜査が用いられることがある。知的財産権を侵害すると思われる偽ブランド商品や海賊版ソフト、児童ポルノなどの猥褻(わいせつ)物、麻薬などの薬物などが、路上やインターネットオークションなどで販売されている場合、覆面捜査で商品を購入し捜査、摘発する買い受け捜査もある。

 日本の判例において、おとり捜査は捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が、その身分や意図を相手方に隠して犯罪を実行するように働きかけ、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕などにより検挙するもの、と定義される。日本においてはおとり捜査の適法性についていくつかの裁判所判断において肯定されているものの「グレーな扱い」となっており、特別な必要性がない限りはおとり捜査を避ける傾向にある。

 おとり捜査の適法性については、そもそも捜査とは言えない場合があるとの指摘がある。おとり捜査を一定の場合には許容する考え方の中にも、機会提供型は適法とする一方、犯意誘発型は違法とする見解のほか〈この見解の中でも、犯意誘発型は実体的訴訟要件を欠くため免訴とする見解や、犯意を誘発して犯罪を実行させることが人格的自律権を侵害するため違法であるとする見解などがある〉、任意捜査一般の問題として、おとり捜査によって侵害される捜査対象者の利益と、捜査の必要性・相当性とを比較衡量してその適法性を検討する見解、捜査対象者の被侵害利益ではなく、おとり捜査によって創出される法益侵害の性質に着目して相当性を判断すべきとする見解などがある。

 2024年に闇バイト対策として、偽造した身分証を提示して身分を秘匿する「仮装身分捜査」の導入が検討されている。同年12月17日に開かれた犯罪対策閣僚会議において「仮想身分捜査」の早期実施等を柱とした緊急対策が決定された。