ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1296話 枕経と引導

序文・引導を渡す

                               堀口尚次

 

 枕経とは、死者の枕元でお経などをあげる事。臨終諷経(ふぎん)、枕頭回向(ちんとうえこう)、臨終勤行。浄土真宗では枕勤めともいう。真言宗では、故人の前に枕飾を設ける。僧侶が故人に末期の水を行い、印を結び、読経する。また、枕元に瑟瑟座(しつしつざ)に坐する〈坐像〉不動明王の絵像〈掛け軸〉を掛けるが慣わしとなっている。不動明王の絵像を用いることは、僧俗共通である。しかし、実際は葬祭業者が枕飾の道具などを持ち込んだり、設置するのがほとんどなので、故人が一般信徒の場合は「南無大師遍照金剛」〈御宝号〉の掛け軸が掛けられることが多い。これは葬祭業者側に枕飾に用いる掛け軸についての知識が乏しいためである。故人が僧侶の場合は、寺側で枕飾の掛け軸を用意することが多いので、おのずと不動明王の絵像〈掛け軸〉であることが多い。曹洞宗では、故人の亡きがらを安置し、枕元に置いた机の上に蝋燭、線香、四華花を供え、読経する。 読まれる経は地域によって異なるが「仏垂般涅槃略説教誡経」「参同契」「宝鏡三昧」などが多い。 日蓮正宗の場合、さらに枕元に導師本尊〈故人の即身成仏のための本尊、通夜・葬儀では祭壇奥に掲げる〉を掲げ、僧侶〈原則として所属寺院の住職〉の導師によって行われ、読経の途中で焼香をする。読まれる経は、法華経の「方便品」と「寿量品」などが多い。「南無妙法蓮華経」が唱えられる。

 引導とは、仏語で、仏教の葬儀において、亡者を悟りの彼岸に導き済度するために、棺の前で導師が唱える教語〈法語〉、または教語を授ける行為を指す。

もとは、衆生を導き、仏道に引き入れ導くことという意味であるが、そこから転じて前述の意味として使われるようなった。引導を渡すというのは現代の日本社会においては、相手に教え諭すような態度で言ったり、相手と縁を切ったり、相手にの宣告をするという行為のことを意味して用いられている。見込みの無い志願者に対して、諦めるように最終的な宣告をする場合などのことも引導を渡すと言う。仏教においての引導とは人を悟りへと導くための真理や教えのことであり、亡くなった人が問題なく仏の世界へと進めるために故人に唱えられる法語でもある。仏教では亡くなった人が自身の死に気付かずにこの世に留まり続けて亡霊となることを防ぐために引導を渡すということが行われている。仏教においての引導を渡すという儀式は葬式において行われる事柄で、亡くなった人が無事にあの世に行けるように導く儀式。