ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1300話 アベノマスク

序文・アベノミクス

                               堀口尚次

 

 アベノマスクは、新型コロナウイルス感染症の流行下に2020年4月から日本で配布されたガーゼ製布マスクの俗称。急激な需要の増大で発生した不織布マスク不足の解消を目的として、安倍政権が約260億円をかけて全世帯に2枚ずつ配布した

 全世帯向けのほか介護施設などにも配布され、世界でもAbenomaskとして広く報道されていた。

 2020年の3月頃から新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が日本でも大きな問題になると、マスク需要が急激に増大し、一般市民のマスク入手がきわめて困難となったほか、医療の現場でもマスク不足のため感染対策が不十分となる事例が報告されるようになった。

 そのため経済産業省などを中心に国内のマスク需要に応える方法が模索され、4月1日の新型コロナウイルス感染症対策本部の会合において、当時の安倍晋三首相は国内全世帯への「布マスク」の無償配布を行うという方針を発表した

これは、一般的に使われている「不織布マスク」を医療機関へ優先的に回し、一般市民には再利用可能な「布マスク」を繰り返し使用させることで需給バランスを調整するねらいがあったとされる。

 政府は4月7日に、この方針を閣議決定。安倍首相は4月17日に記者会見で「国民の高い需要に応じて布マスクを2枚配布する」と説明した。以後、全国で順次配布が進められ、6月25日には、当時の菅義偉官房長官が布マスクの配布が「〈6月〉20日までに全て完了した」と述べた。

 この配布政策、また配布された布マスクが、安倍首相の経済政策アベノミクスになぞらえて語音転換アベノマスクと呼ばれるようになり、海外メディアでも取り上げられた。

 布マスク配布の方針自体には一定の評価の声が聞かれた一方で、広く市販されていた不織布マスクよりもサイズが一回り小さいと受け止める声が出たことや、また配布されたマスクに虫や髪の毛などの異物混入が多数報告されたこと、さらに当初目標とした全戸配布に時間がかかり、配布が終了したころにはすでに市中での一般販売が回復し始めていたことなどから、厳しい批判の声が相次ぐこととなった。