序文・占い
堀口尚次
八卦(はっけ)は、古代中国から伝わる易における8つの概念のことである。すなわち、一般的な周易では『☰〈乾(けん)〉☱〈兌(だ)〉☲〈離(り)〉☳〈震(しん)〉☴〈巽(そん)〉☵〈坎(かん)〉☶〈艮(ごん)〉☷〈坤(こん)〉』の八つの卦のことである。以下は、一般的な周易の八卦について主に記す。
卦(け)は爻(こう)と呼ばれる記号を3つ組み合わた三爻によりできたものである。爻には⚊陽〈剛)〉⚋陰〈柔〉の2種類があり、組み合わせにより八卦ができる。なお八爻の順位は下から上で、下爻・中爻・上爻の順である。また八卦を2つずつ組み合わせることにより六十四卦が作られる。
八卦は伏羲が天地自然に象って作ったという伝説があり、卦の形はさまざまな事物事象を表しているとされる。『易経』繋辞上伝には以下のように八卦の成立について述べられている。「易に太極あり、是れ両儀を生ず。両儀、四象を生じ、四象、八卦を生ず。八卦、吉凶を定む」この文章の解釈は様々であるが、もっとも素直なのは朱子学に基づく諸橋轍次〈漢学者〉のように「宇宙の根源である太極から両儀すなわち陰陽が生じ、陰陽が大陽・小陰、大陰・小陽の四象を生じ、四象の組み合わせを八卦という」という解釈である。
この朱子学の説に基づいて八卦の図を書くのが通常である。方位などに当てて運勢や方位の吉凶を占うことが多い。
京劇の太上老君すなわち老子や、諸葛亮は「八卦衣」という独特のデザインの衣装を着る。これは八卦と太極図を刺繍した豪華な衣装で、天文地理の奥義に通じていることを示す。道教でも、一部の道士が八卦衣を着用することがある。
『西遊記』の初めのほうで、太上老君の金丹を盗み食いした孫悟空は、太上老君によって「八卦炉」の中に放り込まれる。
相撲の行司の「はっけよい」という掛け声の語源は「八卦良い」であるという説もある。※「発揮揚々」からきた説もある。
因みに大韓民国の国旗は太極旗と呼ばれ、白地の中央に置かれた赤と青の2色からなる「陰陽」で「太極」を表し、その周囲四隅に「卦」を配置するなど、中国の伝統的な図案を取り入れたデザインとなっている。太極旗の名称・デザイン・用法は大韓民国の法令によって定められている。